番外編2ヤンマ・ガスト ページ20
「あー、なかなか寒ぃな。ほら、ココア好きだろ」
『ありがとうヤンマ』
ヤンマから缶を受け取る。悴んだ手で開けようとするが、カンカンと取っ手が音を立てるだけでちっとも開く気配がない。
「貸せ、スカポンたぬき。」
『あ、』
ひょいと、缶を奪い私が苦戦していた蓋をヤンマが一瞬で開ける。空いた飲み口からゆっくりと湯気がたちのぼり始めた。
「ほらよ、非力なオヒメサマ。」
『ヤンマに言われたくない…、ありがとう』
「どういたしまして。よし、準備できたらさっさと行くぞ」
『うん』
ンコソパの、よく分からない空中を浮遊するバイクのようなものに乗り込み、目の前に広がる細身な青い壁に甘えるように抱きつく。
「おい、運転の邪魔だ」
『だって寒くて』
「仕方ねえな、せいぜい振り落とされない様に気をつけろ」
エンジンのかかる音がして乗り物が全身を始める。
『それにしても楽しみだな、夜景見にいくの』
「俺からしたらただの光だけどな」
『ロマンがないな、ヤンマは』
「それがわざわざ連れてってくれる奴に言うセリフか?」
不機嫌な口調だが、顔を見なくても本当に怒ってるわけではないのが伝わってくる。今の状況を少し前の私はどう思うだろうか。
『ヤンマの背中あったかいね』
「勝手に暖とんなよ、金取るぞ」
『お金払ったら良いの?』
「は、言う様になったな。少し前のAと大違いじゃねえか」
少し前の私、はヤンマと会うたびにそのヤンキーの様な格好と整った顔に怯えて、いつもギラの背中に隠れてたっけ。
『忘れた、今のヤンマしか知らない』
「忘れんなよ、これからどんどん増えていくぞ」
『はは、いいね。容量いっぱいにしよ』
「…」
段々と坂道の傾斜が増していき、それと比例するように灯りが減っていく。
『ねえヤンマ、本当に道あってるの?』
「叡智の王だぞ、俺は。道ごとき間違えるかよ」
するとヤンマが思いっきりハンドルを捻る。
「しっかり掴まっとけ、元いた世界じゃ見れない景色を見せてやるよ」
「わ、うわぁ!」
ギュンとスピードを増した体はぐんぐんと冷たい風を切って夜道を進んでいく。
「着いたぞ、特等席だ」
『すご、…綺麗』
「は、良いだろ。これが俺の国だ」
暗闇を抜けるとそこは一面眩い輝きを放っていた。ビルの灯り、発電塔、空を飛ぶシュゴット達。
「来年も見るか?」
『うん…来年も再来年もずっと』
「しょうがねえな、付き合ってやるか」
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さもえど(プロフ) - *桜もち。さん» コメントありがとうございます😭こちらこそ素敵なイベントに参加させていただいて光栄です!あと、すごく楽しいです!作品の感想もありがとうございます!!! (12月22日 16時) (レス) id: c71a97a44f (このIDを非表示/違反報告)
*桜もち。(プロフ) - イベント参加ありがとうございます💖トリップ系あまり読まないですが、とても面白いです✨ゲロウジームを可愛く思ったりリタ様の趣味に気付いたりする夢主ちゃんが愛おしいです…!続き楽しみにしてます! (12月21日 19時) (レス) @page18 id: 17da285f26 (このIDを非表示/違反報告)
さもえど(プロフ) - 桜姫さん» 桜姫様、リクエストお受けしました!ラクレス様素敵ですよね、是非書かせていただきます!それと、いつも作品見てくださってありがとうございます。 (12月7日 23時) (レス) id: c71a97a44f (このIDを非表示/違反報告)
桜姫(プロフ) - いつも読ませて頂いてます❗️クリスマス番外編のでラクレスとかは大丈夫でしょうか? (12月7日 13時) (レス) @page13 id: 533f7f5ed0 (このIDを非表示/違反報告)
さもえど(プロフ) - しおりさん» ありがとうございます、励みになります☺️ (11月20日 0時) (レス) id: c71a97a44f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さもえど | 作成日時:2023年11月19日 1時