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なんでもないと言う風にカールした髪を指で巻いて遊んでいる彼女に慄く。私は今、とんでもないことを聞いてしまったのではないか。予期せぬ恋心に動揺が隠しきれない。
「週に何回もお泊まりして、一緒のお洋服とアクセサリーを買ってそれを着て街に出掛けて、城に戻ったらおんなじベットで寝てるのよ」
ダラダラと冷や汗が流れる。確かに距離とか近いなとは思ってた物理的にも精神的にも。でも、私も友達が1人もいないわけじゃないしそう言う距離感の人なんだと思ってた。でも今の答え合わせでそれが違うとわかった。
「なのに、貴方って人は…」
饒舌に語るヒメノ様を止めることもできず、流れてくる言葉たちをただ受け止めているだけの状態になった。
「私じゃない色を身に纏うのね」
そう言って私の胸元のブローチをツンと指で突く。
赤い宝石が施された小さな歯車を模したブローチ。きらりと光るその赤い輝きはひたすらにまっすぐで、まるで私の思い人のようだ。そう思って衝動買いしたことを思い出す。
「ずっと前から分かってたわよ。Aがギラのこと好きなことくらい」
そうぽつりと呟く。その一言で辺りの空気がひとつもふたつも重くなったように思えた。
『あはは、ヒメノ様にはなんでもお見通しなんですね…。』
袖口をきゅっと握る。
『私、フラれちゃった』
「そう」
無愛想にも見えるような簡素な相槌。でも今の私にはその言葉がひどく優しいものであるように思えた。またひらひらと溢れ出した涙たちは重力に従って地面のレンガに染み込んでいく。
「私、貴方の涙好きだわ。」
『え?』
ぐすん、と鼻がなる。見かねた様子でそっと差し出されたシルクのハンカチで顔を拭われる。そして、座らされたベンチでヒメノ様と向き合うような形になる。
慰めなのか何なのか。
綺麗で素敵だわ。ヒメノ様がそう言い終わると少しの沈黙が生まれる。
でも、
「その涙がギラのため…前に好きだった人の為に流れているのは気に食わないわ」
『そんなこと言われてもしょうがないんですけど…』
「分かってるわよそんなこと。別に今すぐ立ち直りなさいとか言ってるわけじゃないの」
そんな軽薄な人を好きになったつもりもないから。
一言付け足したヒメノ様はすっと立ち上がる。今日も変わらず可憐で繊細な装飾が施されたドレスはひとつのシワもなく、目の前のこの人の完璧さを体現しているようだった。
ほら、手を差し出される。
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*桜もち。(プロフ) - さもえどさん» シチュエーションはお任せして大丈夫ならお任せしたいです!甘めだと嬉しいです! (11月10日 7時) (レス) id: 849756f787 (このIDを非表示/違反報告)
さもえど(プロフ) - *桜もち。さん» それと、オススメありがとうございます☺️ぜひ見させて頂きます! (11月9日 22時) (レス) id: c71a97a44f (このIDを非表示/違反報告)
さもえど(プロフ) - *桜もち。さん» *桜もち。様、リクエストお受けしました。私もグローディ様好きなので有難いリクエストです!短編を書くと言う形でリクエストにお答えするのですが、どの様なシチュが良い等のイメージがお有りでしたら、それも教えていただけたらと思います。 (11月9日 22時) (レス) id: c71a97a44f (このIDを非表示/違反報告)
*桜もち。(プロフ) - リクエスト失礼致します!もし宜しければグローディ様でお話を作って頂けると凄く嬉しいです!ご検討よろしくお願いします!あ、あと余談ですが個人的にはタイムレンジャーおすすめです✨ (11月8日 17時) (レス) @page10 id: 849756f787 (このIDを非表示/違反報告)
unnkochan(プロフ) - さもえどさん» 楽しみに待っております! (11月7日 23時) (レス) id: 3310dc048d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さもえど | 作成日時:2023年10月29日 2時