はなひらくとき(ヒメノ・ラン) ページ4
「あら?A。貴方こんなところで何してるの?」
そう呼び止められて、進めていた足を止める。
目元を拭い、悪あがきで髪を整える。美しさを大切にしているこの人の前で、少しは綺麗でありたいと思うから。
『ヒ、ヒメノ様。こんばんは、何って散歩ですよ。今夜は月が綺麗だから、見ないと勿体無く思っちゃって』
「…そうね、確か今日は満月だったかしら。良いわね、美しくて」
そう言ってヒメノ様が視線を上に向ける。月明かりに照らされた彼女はまるで絵本に出てくる天使を彷彿とさせる様な神々しさを放っている。
「でも」
ふいに視線を下ろしこちらに向き直ったヒメノ様がすっと目を細める。それに怯えてしまったのか、体がびくりと跳ねた。
「今の貴方。美しくない」
『え?そっそれは、どういう…』
「誰に泣かされたの?私のかわいいAをこんな目に合わせるなんて…ターセルス・ミルーリア・ダ・パーゴだわ!」
『たーせる…みるー…。なんですかそれ?』
急に激昂したヒメノ様に驚きつつも耳馴染みのないその単語について尋ねる。本当にびっくりした、だって急におっきい声出すんだもん。
「ターセルス・ミルーリア・ダ・パーゴよ!分かりやすく言うと、そうね。」
ヒメノ様が私の手を取りにこりと微笑む。
「"私が地獄に落ちても、こいつだけは地獄に落とす"かしらね」
『ひいっ!なっなんて恐ろしい言葉を!』
「何よ、恐ろしいって。だって当たり前でしょ?」
拗ねたのかぷっくりと膨らんだ頬が月光を反射して艶を帯びている。その顔になんだか笑えて来てつい吹き出してしまう。
『ごめんなさい、ヒメノ様がそんな言葉を使うのが意外だったんですよ。』
「意外って…、だってAは私の大切なお気に入りなんだもの。怒るのは当たり前」
『えー。私ヒメノ様にそんな風に思われてたんですか?ちょっと、いや。めちゃくちゃ嬉しいかも』
嬉しさからくる照れだろうか、つい顔が熱くなってしまう。恥ずかしいー、なんて言いながら顔を抑える。さっきまで辛かったのにヒメノ様と話しただけでこんなにも気持ちが楽になった。
『ヒメノ様は私のことが大好きなんですね』
ふざけて言ってみる。
「ええそうよ。お城に閉じ込めておきたいくらい」
『…え?』
本日2回目の困惑が湧き上がった。
「貴方全然気づかないのよね。私がどれだけアプローチしてるのか」
『え、え、え!?』
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*桜もち。(プロフ) - さもえどさん» シチュエーションはお任せして大丈夫ならお任せしたいです!甘めだと嬉しいです! (11月10日 7時) (レス) id: 849756f787 (このIDを非表示/違反報告)
さもえど(プロフ) - *桜もち。さん» それと、オススメありがとうございます☺️ぜひ見させて頂きます! (11月9日 22時) (レス) id: c71a97a44f (このIDを非表示/違反報告)
さもえど(プロフ) - *桜もち。さん» *桜もち。様、リクエストお受けしました。私もグローディ様好きなので有難いリクエストです!短編を書くと言う形でリクエストにお答えするのですが、どの様なシチュが良い等のイメージがお有りでしたら、それも教えていただけたらと思います。 (11月9日 22時) (レス) id: c71a97a44f (このIDを非表示/違反報告)
*桜もち。(プロフ) - リクエスト失礼致します!もし宜しければグローディ様でお話を作って頂けると凄く嬉しいです!ご検討よろしくお願いします!あ、あと余談ですが個人的にはタイムレンジャーおすすめです✨ (11月8日 17時) (レス) @page10 id: 849756f787 (このIDを非表示/違反報告)
unnkochan(プロフ) - さもえどさん» 楽しみに待っております! (11月7日 23時) (レス) id: 3310dc048d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さもえど | 作成日時:2023年10月29日 2時