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流石のジェラミーも私が泣き出すとは思ってはいなかったようで、少しばかりの動揺が見られた。
でも、ジェラミーは優しい。その優しさに甘えてしまう自分が情けないと思いながらもぐすんと鼻を啜り、頷き立ち上がる。

『賛成、どこか良い所へ連れて』

心配されたのが悔しかったから、ぶっきらぼうな返事を返す。せめてもの王としての意地で強がって見せた。

「あぁ、この狭間の王に任せてくれ。お前さんをとびきりの場所へ連れて行ってやろう」

また行間を読んだのだろうか、顔色ひとつ変えないこの男には叶いそうにもない。

「さあ、俺に捕まって。この狭間の王が自信を持っておすすめするベストスポットだ、移動費は相当な値段になると思ってくれよ」
『あっそ、逆に落としたら覚悟しないから。国家予算ばりの請求額叩き出してやる』
「おっと、それは怖い。ならもっと丁寧にお前さんを抱きしめておかないと」

ぐい、と腰を抱かれ自然とジェラミーとの距離が縮まる。ぱっちりとして堀の深い二重、すっと通った鼻筋、雪のように真っ白な肌に異種族の象徴である額の紋様。それら全てがハッキリと目に映る。美しいその一言で言い表せないほどの魅力を持つジェラミー、につい見惚れてしまった自分にムカついた。

「ほら、到着さ」
『あ、ありがとう』

そこは寂れた塔の屋上だった。シュゴッダムにこんな場所があったなんて知らなかった。もしかしたら雲に手が届くかも、なんて手を伸ばそうとしたが自分の眼下に広がる景色を見てそっと手を引っ込める。

そうこうしている間に私の意識は話を再開したジェラミーに奪われた。

「さっきも言ったが、A。お前さんはきっと恋と憧れの狭間にいる、例えるならばそうだな。」

早く言えばいいのに。勿体ぶって行間を挟んでくる隣の男は続きを待つ私の顔を覗くたびに胡散臭い笑顔を向けてくる。

「絵本に出てくる優しい王子様に恋をする少女のようなものさ」
『はは、言えてる。でも私が好きになったのは邪悪の王様だったよ』

そう言い返す。でも、私からしたら王子様だった。そのセリフは飲み込む。正しくいうなら行間に込めた。
そんな私に対してジェラミーは呆れたように口を開く。

「まったく、お前さん。それを言ったらせっかく俺が読みとった行間が台無しじゃないか」
『いいじゃん、別に。…じゃあさ、なんで私がフラれたのか行間読んで考えてよ』

−3→←今夜は月が綺麗なようで(ジェラミー・ブラシエリ)



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*桜もち。(プロフ) - さもえどさん» シチュエーションはお任せして大丈夫ならお任せしたいです!甘めだと嬉しいです! (11月10日 7時) (レス) id: 849756f787 (このIDを非表示/違反報告)
さもえど(プロフ) - *桜もち。さん» それと、オススメありがとうございます☺️ぜひ見させて頂きます! (11月9日 22時) (レス) id: c71a97a44f (このIDを非表示/違反報告)
さもえど(プロフ) - *桜もち。さん» *桜もち。様、リクエストお受けしました。私もグローディ様好きなので有難いリクエストです!短編を書くと言う形でリクエストにお答えするのですが、どの様なシチュが良い等のイメージがお有りでしたら、それも教えていただけたらと思います。 (11月9日 22時) (レス) id: c71a97a44f (このIDを非表示/違反報告)
*桜もち。(プロフ) - リクエスト失礼致します!もし宜しければグローディ様でお話を作って頂けると凄く嬉しいです!ご検討よろしくお願いします!あ、あと余談ですが個人的にはタイムレンジャーおすすめです✨ (11月8日 17時) (レス) @page10 id: 849756f787 (このIDを非表示/違反報告)
unnkochan(プロフ) - さもえどさん» 楽しみに待っております! (11月7日 23時) (レス) id: 3310dc048d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さもえど | 作成日時:2023年10月29日 2時

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