明晰夢 【短編集】

… ページ32

あぁだめだ、元彼という言葉にも嫉妬してしまいそうだ。

俺はいつからこんなになってしまったのだろう。

そんなことを考えていたが、次の彼女の言葉で思考は停止した。

『男の人と話したら、目を合わせたら、笑顔を見せたら、殴られてたから、』

『その、』

怖くなっちゃって、と彼女は笑う。





今までに見た事のない、辛そうな顔だった。





俺は呆然とした。

彼女が、暴力を受けていた？

あんなに笑顔を絶やさなかった彼女が、前は暴力を受けていた？

こんないい子に暴力を振るう奴がいた？

＿＿有り得ない。






「そう、だったんだ、」

矜羯羅(こんがら)がった頭の中で精一杯しぼりだした言葉がこれだった。

とりあえず、落ち着かないと。

「大変だったね。」

そう声をかけると、彼女は驚いた顔のまま停止した。

「どっ、どうしたの！？」

『そ、そんなこと言ってくれる人いなかったから…』

「え？」

『…私、嫌われ者だったからさ。
その、元彼に色んな噂ばらまかれちゃって。
お前みてーなたサイテーなやつなら殴られて当然じゃねって言われるのが落ちだった、し…』

どんどん涙声になる彼女。

思わず抱きしめていた。

『ふっ、ふくら、くん…？』

「ごめん、大丈夫、大丈夫だよ。
ゆあちゃんがそんなことするはずないって、僕が1番わかってるから。」

『う、ん…』

そういうと、震え出した彼女。

「わわっ、まっ、」

『ごめん…ごめんね…』

「大丈夫だよ…？」





「これからは、ずっと、俺が味方にいるからね。」





『うん…』



「俺だけじゃないよ、」



「…その、まぁ、伊沢たちだって、ね。」



本当は、俺だけがいいけど、




そんなこと言える立場じゃ、ないし。




『ありがと…』




『福良くんがいるから、すごい、心強いよ。』





私、福良くんのおかげで、強くなれたの、



って、君が泣きながら言うから、




俺は思わず横で笑った。





「そんなの、俺もだよ。」






ーー
作者です。

あまり途中で出てくるのは(邪魔になってしまうような気がして)好きではないのですがいい感じの文字数なので。

お気に入り登録やコメント、お気に入り作者にまでしていただき、ありがとうございます。

まさかここまで見てくださる方がいるとは思いませんでした。

QuizKnock様のお力…恐ろしい…(？)

本当にありがとうございます！



これからも明晰夢といろをよろしくお願い致します。(あれ、デジャヴ…)

いつもよりかっこいい理由。　_ymmt→←嫉妬と、元彼と。　_fkr

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