Agapanthus (ページ24)

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引き金ページ24

･A

目覚めのいい朝だった。

いつもの寝室、いつものベッド、いつものカーテンから差し込む光で起き上がる。

アラームの音もそんなに不快に思わない。

｢……。｣

ホテルにいたはずなのに、戻ってる。

確かに記憶がある。

だけど、途中でまた意識がなくなった気がする。

腰は痛くない。

特有のだるさもない。

ただ何か、話をして……そのまま眠ってしまったのをまた部屋に入られて運ばれたのか。

ベッドから立ち上がり、服に着替えようとクローゼットを開けたその時、ひらりと何かが落ちる。

紙のようなものが挟まっていたのか。

" 会いたくなったら、この番号に電話して。JIN "

｢……もう、会わない。｣

会うわけないじゃないか。

破り捨ててしまおうか。

……でも一応個人情報だし、なんて要らぬ配慮。

丁寧に財布にしまってしまうのは馬鹿だろうか。

キッチンにたって、軽く朝食を作って食べてから身支度をして玄関から外に出る。

辺りを見回してみた。

誰の気配もない……と思う。

地下に向かうとヌナがいた。

mn｢おはよう。｣

｢おはよ。｣

車に乗り込み、映画館に向かう。

朝の試写会の後、壇上挨拶をするって台本を読みながらヌナの話を聞いたり。

いつも通りやれてる。

大丈夫。

mn｢今回の衣装はスーツだから衣装室にあるよ。｣

｢はーい。｣

スーツか、久しぶりだな。

そんな能天気なことは考えられるくらい、自然だ。

mn｢９時から上映で１１時に壇上挨拶開始ね。それから─────────｣

説明を聞きながら水筒のお茶を飲んだ。

やけに乾く喉。

挨拶に緊張してるだけか。

映画館の裏口から場内に入ると控え室前の廊下には関係者がたくさんいた。

多少道は開けてくれたもののほんとに狭いね。

sj｢A！｣

共演したソジュ二ヒョンだ。

ニコニコ手を振りながら歩いてきた。

近づいてくるにつれて図体のデカさを痛感する。

この人ほんとにでかい。

｢おはようございます。｣

sj｢おはよう。Aの立派なスーツ姿見れるなんて嬉しいよ。｣

｢おじさんみたいですね。｣

テキトーに言ってもニコニコして頭を撫でてくるからほんとに分からないよ、この人。

sj｢この後の予定は？｣

｢雑誌の撮影とかです。｣

sj｢俺の入る隙はあるかな。｣

｢え？｣

sj｢いいカフェ見つけたから一緒に行こう。奢るから。｣

ニコニコしながらも若干の圧をかけてくる。

渋々だけどマネヌナに確認した。