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街外れの小さな古本屋にて。
女は窓辺の席で本を読み耽っていた。
彼女以外に店内には誰もいない。
店は全体的に老朽化が進んでおり、新品そうなものは何一つとしてなかった。
ただ一つ、奥に設置された扉を除いて。
取ってつけられたような扉は、明らかに店内の雰囲気に馴染んでいなかった。そこだけ異様に目立ってしまっている。
それは女がここへ来てから、無理やりスペースを空けて作られた部屋への入り口だった。
迷える者に救いをもたらす。そんな信念の元“勝手に”作ったものだ。
長い沈黙を守っていた店内に、突如ドアチャイムが鳴り響く。
「A!!
今日こそ高専に戻ってきてもらうからね!」
ずかずかと入ってきた男は五条悟という。
声を張り上げ女の元へと駆け寄った。
「うるさいですねぇ。
…何回も言っているでしょう?私は“追い出された”と。
貴方も知っておられるでしょうに。」
「いーや、上の阿呆共が勝手に決めたことだ。
僕はAを追い出すのは辞めろと再三忠告していたのに。」
「もう自由にさせてくださいよ。
私は私の生きたいように生きますから。」
女は本から目を離さずにそう言い放った。
もう一週間ほど二人はこんなやり取りを続けている。
五条悟がAにここまで固執するのは、深い理由があった。
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作者名:秋星 | 作成日時:2022年4月17日 1時