第12話 ページ13
「本当に、行っちゃうの？」
「うん…もう決まったことだから」
私は涙を拭いながらアルワンダの手を握る。
アルワンダが、親の都合で遠くの町へ引っ越すことになってしまった。
移動するのに時間がかかるため、子どもの足では絶対に辿り着けないような場所なのだとか。
「僕、寂しいな。4人で遊ぶの楽しかったのに…」
フーザも珍しく泣きそうな顔になりながら言う。
それを見たジェイルが口を開いた。
「なんだよ、皆しんみりしちゃってさ。こういうときは笑顔で送り出すもんだろ」
「でも、もう会えないくらいの距離だよ？」
「そんなの、大人になったらまた会えばいいだろ」
ジェイルがそっぽを向きながら言う。
確かにそうだ。引っ越すからといって、永遠に会えなくなるわけではない。
それに気づいた私は笑顔で言った。
「そうだね。じゃあまたこの4人で集まろうね！ 約束！」
「…うん。絶対また会えるよ、絶対！」
アルワンダも笑顔になった。笑ってはいるが、どこか悲しそうな表情も混ざっている。
アルワンダが村から出ていく時、私達の方を振り返っだ。
「また会おう…必ず」
私達は微笑みながら頷いた。
「行っちゃったね」
「…そうだな」
そう呟くジェイルの声は少し震えている。
「ジェイル…泣いてるの？」
「は！？ 泣いてねぇよ！」
ジェイルはそう叫ぶと自分の家の方に走っていってしまった。
フーザはジェイルの背中を見ながら私に話しかける。
「ジェイルはああ見えてアルワンダのこと気にかけてたからね。なんだかんだで寂しいんじゃないかな」
「ジェイル、友達想いだもんね。フーザも寂しい？」
「そりゃあね。でも、もう会えなくなったわけじゃない…」
そこまで言うと、フーザは私に向き直った。
私がキョトンとした顔をしていると、フーザは私の手を両手でギュッと握った。
「A。僕達が15歳になる9年後、その年には世界中の勇者一族から何人か、魔王を討伐する人が選ばれるんだ。毎年A家の人間は選ばれているから、君は必ず討伐に赴くことになると思う。だから…」
フーザは手を更にギュッと握る。
「僕、9年後の勇者に選ばれるように頑張るよ。一緒に魔王を倒して、また4人で一緒に遊ぼう。な？」
フーザはニコリと微笑む。
私は頷きながらフーザの手を握り返した。
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猩々(プロフ) - パトさん» そのようにおっしゃっていただけて嬉しいです。この作品を読んでくださりありがとうございました。 (2021年3月19日 19時) (
レス) id: f5012a712b (このIDを非表示/違反報告)
パト(プロフ) - 素敵な作品をありがとうございました。終盤の段々狂っていく感じが凄くゾクゾクしました。読み終わってから設定キーワードを見て「こんなところにもメッセージが……」と感動しました。長文、駄文失礼しました。 (2021年3月17日 22時) (レス) id: 8ed95612e3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：猩々 | 作成日時：2020年11月6日 14時
