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部屋に入ってドアに持たれるようにして座り込む。
ドクドクと脈打つ心臓ですらうるさく感じて、右手で乱暴に胸元を握りしめた。
さっき料理中の不注意で切れた指先の血で襟が赤く染まった。
稽古場に、あいつと同じ香水を付けた人がいたんだ。
多分、お付きの人とかスタッフさんとか、普段はあまり一緒の時間を過ごすわけではない人。
ほんの一瞬、すれ違った瞬間にふわりと香っただけ。
だけど身体が、頭が、あの日の恐怖を思い出すには十分すぎるほどの時間だった。
おかげで料理に集中できなくて怪我までしてしまった。
dt「っ…、ﾊｱｯ…、」
――まただ。
また、息ができない。
吐くことも吸うことも制限されて身体から酸素が失われていく。
同時に力も抜けてきて、前屈みに手をついた。
カシャン、と指先に何かが触れる。
何かのタイミングで床に転がっていた、カッターだった。
カチカチカチ、と力の入りにくい指で刃先を出す。
震える手で握りしめて、左手首に押し当てる。
手錠を無理に外した時の傷は治りかけで、カッターの刃が当たっただけで簡単に出血した。
dt「ﾊｯ…ｯ、痛った…ｯﾊ…ﾊｱ…ｯ、」
腕の痛みに、消えかかっていた意識が浮上する。
それに加えて、
痛みに気が紛れたのか、息苦しさが少しだけ和らいだ。
それでも痛みに慣れてしまうと、また苦しさばかりが頭を占めてしまう。
――痛みがあれば、苦しさが無くなる。
回らない頭では、そんな馬鹿みたいな学習しかできなかった。
握ったままだった刃を血が流れる手首に再び押し当てて、今出せる精一杯の力で、勢いよく、引き抜いた。
dt「ｯ…あぁ…ｯ、！ﾊｱｯ、ｯ…ﾊｯ…ﾊｱ…」
ドクドクと流れ出る血を止めることはせず、床の上に倒れ込む。
天井を仰ぎながら痛みと深呼吸をひたすらに意識を向けているうちに、気道の締め付け感は無くなっていった。
代わりに貧血独特の浮遊感を覚え始める。
dt「っ…ﾊｱｯ…、やば…ｯﾊ…ﾊｧ…」
息苦しさがなくなったおかげで頭が冷静になって、今更ながらに脳が警鐘を鳴らす。
血を止めなきゃいけないのは分かってる。
だけどそれ以上に、身体が重くて目蓋が重くて、身体を起こすのですら億劫になってしまっていた。
dt「……もう、ｯ…いいや、ﾊｱｯ…」
疲れ切った俺は、眠るように目を閉じた。
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ゆづき - リクエスト失礼します！他のメンバーが体調を崩していてみんなそっちの方に気を取られて看病をしていたけど、実は舘様も体調が悪かった、みたいなお話を読みたいです！これからも頑張ってください！よろしくお願いします！！ (2020年4月10日 17時) (
レス) id: 045b75a448 (このIDを非表示/違反報告)
りっか(プロフ) - リクエスト失礼します！ 舘様と阿部ちゃんが体調を崩していて他のメンバーがそっちにつきっきりの中、実はラウールも体調が悪いけど隠してしまって悪化する、、、みたいなお話が読みたいです！よろしくお願いしますm(_ _)m (2020年4月1日 0時) (レス) id: 427fe3b1b8 (このIDを非表示/違反報告)
いちごみかん。(プロフ) - リクエスト失礼します！体調の悪かった舘様がロケバスの中で酔っちゃってしょっぴーとひーくんに助けられる話がみたいです！このお話大好きです！これからもがんばってください！ (2020年3月22日 1時) (レス) id: bb0523e0f7 (このIDを非表示/違反報告)
パイナップル(プロフ) - 初めから一気読みさせて頂きました！話に惹き込まれていきました。早速リクエストなんですが舘さん自身が体調悪いのを知っていたのに無理して倒れて皆に看病してもらった後に治ったふりをしてまた倒れてしまう話が見たいです看病のメインは翔太くんでお願いします (2020年3月15日 0時) (レス) id: ec2780e711 (このIDを非表示/違反報告)
ドリチャ(プロフ) - リクエストお願いします！いつもそばに居た舘さんが最近精神がやられてるのを見続けて、翔太くんが自分がしっかりしなきゃと思うけど、最終的に翔太くん自身が辛くなってしまうお話がみたいです！ (2020年3月14日 22時) (レス) id: 4c61a442d0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おれんじ
| 作成日時：2020年2月22日 10時
