４日目〈握手〉 ページ44
.
健「で、2人はどうしたいの」
その問いに少しだけ悩むそぶりを見せた阿部は、俯いたまま、小さく口を開いた。
ab「......さくま」
健「...そうだよな。...じゃあ、」
クルッと振り返った健くんは、
「手、出して」と口パクとジェスチャーで伝えてきた。
不思議そうな顔で差し出した腕を掴んで、健くんはふっかを阿部の前に引っ張る。
健「阿部、この手、掴める？」
手を辿ってふっかだと分かった阿部の表情が少し強張る。
それでも、
おずおずと重ねられた手がキュッと繋がった。
健「ん、よし。お前ら車だよな？」
iw「あっ、はい」
健「じゃあ深澤はそのまま阿部を車まで連れてってやって。岩本はちょっと話ある」
ふっかに車の鍵を預け、阿部と出ていくのを見送ったあと。
健くんが舘さんに何かを確認した。
その声は小さくて、なにを話しているかは聞こえない。
舘さんがコクン、と小さく頷いて、健くんは俺を見る。
健「岩本。ちょっとソファまで運んでくれない？」
iw「え、了解です、......あっつ！」
抱き上げるとわかる、尋常じゃない熱。
阿部が居なくなったからか、さっきよりもグッタリとしているようにも見える。
あれ、足怪我してる...？
ソファに下ろすとき、妙に盛り上がった右足首が目に入った。
裾と靴下で隠れているけれど、包帯が巻かれているんだろうということが分かる形だった。
dt「ごめん...照...」
iw「っ、何で舘さんが謝るの？俺こそ、こんな無理させなきゃいけない状況つくってごめん...」
健「はいはい、いつまで謝ってんの。舘様、包帯外すよ？」
健くんが足を持ち上げれば、僅かに歪む舘さんの表情。
でも手はキツく握られていて、相当痛いんだと思う。
せめて少しでも痛みが逃げるように、と俺の手を握らせた。
健「...結構な衝撃だと思うけど、いい？」
iw「......はい、」
ゆっくりと、大きなガーゼが剥がされる。
そこあったのは、目を背けたくなるほどの傷。
赤黒く腫れた皮膚に大きな縫い傷。
今度は俺が手を握りしめる番だった。
健「まあ、俺も詳しい事情は知らないけど。こんな傷を負ってまで、宮舘は阿部を守ろうとしてた。一人で」
iw「......はい」
健「お前らがちゃんと宮舘を守ってやれ。いいな？」
健くんの問いに、強く頷くことで返す。
満足そうな顔をした健くんは、新しいガーゼを傷に当て、丁寧に包帯を巻いてくれた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1457人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
苺(プロフ) - 素敵な作品をありがとうございます！次回更新たのしみにしております、お身体にはお気を付けてくださいね(*´-`) (2019年12月8日 12時) (
レス) id: 2b505c53ee (このIDを非表示/違反報告)
azuvixx(プロフ) - さっくんの優しさが現れる作品だなと思います。凄く続きが楽しみです！ (2019年11月24日 11時) (レス) id: 06f1cacbb4 (このIDを非表示/違反報告)
月の兎(プロフ) - 初めまして。まさかブイの面々が出てくるとは思いませんでした。ぶいすの担の私歓喜です（笑）続きも楽しみにしております！ (2019年11月21日 23時) (レス) id: 9b6fe057d4 (このIDを非表示/違反報告)
みなみ(プロフ) - 続きが気になります。 (2019年11月18日 9時) (レス) id: 34a5132cfc (このIDを非表示/違反報告)
美福(プロフ) - 更新の通知が来る度に凄く嬉しくてウキウキして見ています！これからも更新楽しみにしてます！頑張ってくださいね！ (2019年11月17日 13時) (レス) id: 9e6bdd0fef (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：おれんじ
| 作成日時：2019年11月11日 21時
