朝焼けを探す花 (ページ47)

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志乃ちゃんに心配されながら指定された部屋へ向かえば、いつもと変わらない顔ぶれのお偉いさん方。

……今日は滝沢くん居ないんだ。

立場的には事務所側にいるけれど、話し合いの中では私のフォローもしてくれる滝沢くん。

居ないとわかって、かなり落胆してる自分がいる。

＊「早速だが、もう一度発症の経緯と治療の流れ、今後の活動について話してもらえるか」

『……はい、』

もう何度目だろう。

話の始まりはいつも、こうして経緯を私に話させるんだ。

その意図は分からないけど、
まるで取り調べや査問を受けているような気分になる。

『――、今後、は…。目眩の症状が落ち着くまでは何とも言えないですが…少しずつ感覚を取り戻してきてはいます…』

＊「具体的に。いつ頃から以前の活動ができるんだ？」

『っ、ですから、症状が落ち着くまで…』

＊「現状どれくらい回復しているんだい？バク転くらいならできててもいい頃なんじゃないかね」

『……、』

はぁ？と悪態を吐きそうになるのをグッと堪える。

なにが「バク転くらい」だ。そんな簡単じゃないっつーの。
一回自分でやってみやがれ…！！

……口に出したいのは山々だけど。さすがに我慢したよね。

『……いま言えるのは、次のツアーの初日で披露するのは厳しいということくらいです』

＊「……ﾊｱ、そうか」

『……すみません』

その後も、一向に進展しない話を堂々巡りのように繰り返す。

私の、「真実を伝えて待っててほしいとお願いしたい」という希望を口に出しても、サラッと流されてしまった。

「そういう考えもあるよね」なんて。

結局は私が折れて、自分たちの…事務所の意見に此方が乗っかるのを待っているんだと思う。

――コンコン、

志「失礼します。そろそろ移動しないと時間が、」

＊「あぁ、仕事があったのか」

『……昨日もお伝えしてありましたけどね。……失礼します』

なによ、人を暇人みたいに。

イライラを隠すことなく廊下を歩いていたら、隣の志乃ちゃんがクスクスと笑っているのが見えた。

『……何。』

志「ごめんごめん。ちょっと安心してさ。素直に苛立ちを表に出せてる姿が見られて良かったよ」

『……私は全然よくない』

むっ…と頬を膨らませて拗ねた表情を向ければ、志乃ちゃんは今度こそ声を出して笑った。

少しだけ、気分が楽になった。

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