朝焼けを探す花 (ページ45)

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『……またか、』

メンバーの配慮で先に家へ送ってもらえた私。

志乃ちゃんの運転する車を降り、駐車場口からエントランスへと向かってポストを開いた。

そして、真っ白な封筒を見つけ、溜息を吐く。

『……これで記念すべき10通目～…なんてね、』

不定期に送られてくるソレは、私の写真や愛を綴った手紙。
まあ…いわゆるファンレター…ってやつ？

自宅に届いてる時点で普通じゃないけどさ。
住所書いてないってことは、直接投函しにきてるんだろうし。

ただね、

追われたりとかそういうのが無いだけマシかなーなんて。

良くない考え方かもしれないけど。
思っちゃったりしてるよね。

エレベーターの壁に身を預け、ビリビリと雑に開く。

『はぁ…やっぱり今日はふっかだったか』

愛……といっても、
綴られているのは私以外のメンバーへの愛。

私はとことん、嫌われている。

いかに彼らがファンに愛されているか、
そして、いかに私がファンに嫌われているか。

いつも長々と書かれている。

きっと週刊誌を読んだんだろう。

――辰哉くんの邪魔をしないで。
――辰哉くんの未来をあなたが傷付けた。
――辰哉くんが可哀想。

そういう言葉が並べられていた。

『愛されてるね～、辰哉くん？』

ペラリと便箋をめくり、二枚目を見る。

――足手まといのあなたに何ができるの。
――戻ってこなくて良かったのに、この疫病神。
――邪魔者は居なくなった方が、彼らは幸せになれる。

『はは…雪村さんみたいなこと言うじゃん』

玄関を開けリビングへと入り、

ファンレターの溜めてある紙袋の中へ封筒を投げ入れる。

色とりどりの、ちゃんと愛のこもったラブレターの中で、
純白の封筒は異様なほどに目立っていた。

『んぁー、お腹鳴った…』

くるくると身体は空腹を訴えているけれど、別に「食べたい」という気持ちが湧いてくるわけではなく。

あんなに好きな料理も、ここ最近はやる気が起きない。

人間ね、案外食べなくても生きていけちゃうのよ。

みんなといる時にちょいちょいって摘んでれば。
食事という食事なんかなくても。生きながらえちゃう。

『……。…寝るか』

身体を引きずるようにしてシャワーを浴び、ベッドに倒れ込むように飛び込んだ途端、

気絶するかのように意識を手放した。

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