朝焼けを探す花 (ページ43)

今日:3 hit、昨日:12 hit、合計:292,101 hit

４３、桃ページ43

.

お待たせしましたー。と移動車に乗り込んできた2人は、ガッチリ手を繋いでいた。

乗り込むときに自然と離れたけど、佐久間さんは見逃さないよ。

……とりあえずは作戦成功かな。
ラウールを振り返ってグッと親指を立てた。

『隣、いい？』

sk「あ、どうぞどうぞ～」

空いていたのは俺の隣と、最後尾の真ん中の席。

ふっかが譲ったんだろうな。
あの真ん中の席、あんまり良い席とは言えないから…(笑)

sk「少しは話せた？」

『え？』

sk「ふっかと」

『あー…みんなの差し金？もしかして、』

苦笑いをしたAが「気を遣わせちゃったかな…」なんて呟くから、そうだねぇ…と相槌を打つ。

『……そこは「そんなことないよ」って言うとこじゃん？(笑)』

sk「いーや、お前らが変な空気感で居るから、ラウールと康二が心底気を遣ったんだよ。年下にそんなことさせて、」

『情けない、…だよね、分かってる』

sk「本当かねー…？」

本当だもん、と言い返してくるAの顔は何だか疲れていて。

……まあでも、そりゃそうだよな。

俺だって同じ立場になれば周りに気ぃ遣っちゃうだろうし、いくら平気を装っても気は遣わせちゃうだろうし。

sk「……こっち、座るか？」

『へ？』

sk「あー…いや、寝れる時に寝た方がいいんじゃないかなーって」

『……ううん、大丈夫よ』

sk「そう？」

今日の取材は外ロケでの撮影もあったから、少し都心から離れたスタジオに移動してた。

必然的に、帰りも少し時間がかかるわけで。

窓際にいた方が寝やすいかな？と思って聞いてみたけど、
本人は鞄から舞台の台本を出して読み始めた。

sk「稽古もうすぐだっけ」

『もうすぐ、っていうか明日には本読み』

sk「……無理すんなよ」

『なに、どうしたの(笑) 妙に優しくない？』

sk「ばか、俺はいつだって優しいだろ！」

『えー？私たち不仲じゃなかったっけ』

sk「不仲じゃない！…って普通自分で振る！？」

あはは、と声を出して笑ったA。

ニコニコと台本に視線を戻しながらも、小さく「ありがとう」なんて言うから、俺も変に照れて「…おう」と小さく返す。

恥ずかしくて目線を外に投げ、騒がしいメンバーの会話に混ざることもせずにしばらく黙ってた。

.