・ ページ46
.
こんな修羅場はいくつも潜り抜けてきた。
いくらなの知れたチームの一員とはいえ相手は若造一人。この世界に生きる年数は自分の方が上だ。大丈夫。
「……俺は話さない」
先に動揺や焦りといった隙を見せた方が負けなのだ。
しかし、青年は焦る様子も怒る様子もなく、一定の冷たさを保ってぼんやりとそこにいた。
「なら今はお前を殺さない。お前の周囲の人間を片っ端から始末してお前の前に屍並べて問い質すだけだよ」
「……情報屋は孤独じゃないとやっていけない」
動揺を堪え、畏怖を隠し、反撃の隙を窺う。
大丈夫。風貌も変えて本名も捨て、過去の自分とは別人になった。過去の関わりなど、辿れるはずもない。俺は孤独だ。
「へえ？あー…なんだっけな、奥さんはまだギリ20代だったか？」
「……は、」
「あんた結構年いってんだろ。案外ロリコン？(笑)」
ふはっ、と笑う目の前の青年に初めて動揺を隠せなかった。
「……どういうことだ。」
「子供は…6歳と3歳？未来ある愛らしい兄弟だったね〜…」
「……やめろ」
何故だ、なぜ知っている。
「未来のために子供はこの世に残してあげるよ。大丈夫。心配しなくても彼らが生を望めばいくらでも生きていける世界だから」
「……っ」
「言葉も出ないか。ほーら、冥土の土産に奥さんの人生の安泰でも持って行ってやれよ。ほんの少し情報を話すだけだぜ？」
青年がヒラヒラと揺らしたのは、ポストに封筒を入れる自分の姿と、同じ建物から出てくる愛しい姿。
ポストを利用するのは情報提供のやり取りの一つだ。
仕送りと情報提供、手法は同じはずなのに何故バレた…？
「……分かった。…分かったから、妻は」
「ちゃんと話せば奥さんの安全は保障してやる。……俺たちは誰かさんの影響で相当お人好しな組織なんでね」
「……俺がエスの情報を話したのは、――」
薄暗い立体駐車場の奥地、乾いたサイレンサーの音が響いた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1032人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
aya(プロフ) - eighterなのでパッチ懐かしくなりました！！世界観とかすごいです！続きも気になります、、 (2020年9月19日 18時) (
レス) id: 21fa8df380 (このIDを非表示/違反報告)
おれんじ(プロフ) - (名前)vividさん» 普段おちゃらけてる人が真剣な話をしているところが好きなんです(笑) 今後もパッチさん出てくる、…かも？乞うご期待！ (2020年8月31日 12時) (レス) id: f2384aad00 (このIDを非表示/違反報告)
(名前)vivid(プロフ) - ここに来てGUMの言葉深いわぁ。元々のパッチのメンバーとの繋がりもまた嬉し（≧∇≦） (2020年8月16日 6時) (レス) id: 99ce633299 (このIDを非表示/違反報告)
おれんじ(プロフ) - さっちいさん» ご指摘ありがとうございます！他にも誤字脱字等もあるかもしれませんが、ぜひ作品を楽しんでいただければと思います…！(^^;) (2020年8月9日 22時) (レス) id: f2384aad00 (このIDを非表示/違反報告)
さっちい(プロフ) - コメント失礼します。設定の阿部ちゃんの所、 常にラムネを持ち歩いてお里 となっていますが、 持ち歩いており の間違いだと思います！ (2020年8月9日 21時) (レス) id: 9ffff271c4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：おれんじ
| 作成日時：2020年7月11日 18時
