53、緑 ページ6
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sk「いらっしゃい」
いつもより幾らか静かに出迎えてくれた佐久間は、
今の俺と話すのはいつもの明るいテンションじゃないことを悟っているんだろうな。
こういう気遣いができると知っているから、こいつを選んだのかもしれない。
sk「ごめん、お茶とかそういうのはないけど」
ab「いいよ全然。話聞いてもらいたいだけだから」
ソファに並んで座り、佐久間は俺が話し出すのを静かにじっと待っていてくれた。
俺はAと話したことも、自分の中にある焦りも、
整理がついてないまま、うまく表現できないまま、時間をかけて一気に伝えた。
sk「…ふふ、なんか阿部ちゃんらしくないね」
ab「……それは自分が一番わかってる」
sk「実は俺も最近ずっと考えてたのよ、」
そう言った佐久間は、テーブルの上に置かれていた四角い箱を手に取った。
どこか見覚えのあるその箱を開けると、中にはひび割れたマグカップが入っていた。
……あの日の。
sk「楽屋入って、割れてるこれを見たときは本当にショックでさ。言われるがままに受け入れたんだけど、」
所々欠けている箇所はあるものの、絵柄がズレることもなく、ヒビも隙間なくぴったりはめられている。
元通りとはいかなくても、これ以上ない修復だと思う。
仕事を終えた佐久間は本当に喜んでたっけ。
sk「……亜美さんってさ、けっこう不器用なんだよね」
ab「あー…確かにあんまり器用なイメージはないかも」
……あれ?
でも確かこれ、あの子が撮影中に楽屋で直してくれたって言ってなかったっけ。
sk「……こんなに綺麗にできるもんかなぁ、って」
ab「しかも指先怪我してる状態でだもんな」
sk「そうなんだよねー…」
もしかしてさ、と佐久間が俺の顔を見上げた。
sk「あいつの言う” 綻び ”って、こう言うことなのかな」
ab「辻褄が合わない…か、確かにね」
sk「だとしたら亜美さんは嘘ついたってことだよね?なんで?」
佐久間の言う通りだ。
あそこで自分の手柄にするメリットは何だ?
sk「……てか、どこからだろうな」
ab「何が?」
sk「亜美さんの嘘。……もし、コップを割った人も嘘つかれてたら、俺、…あいつに合わす顔ねぇ…っ」
佐久間の震える言葉の意味を理解した途端、俺は頭の中が真っ白になった。
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むち(プロフ) - 大号泣しました。。すっごく苦しくて感情移入しちゃって。素敵な作品でした。ありがとうございました (2021年4月27日 1時) (レス) id: fc08b9a7cc (このIDを非表示/違反報告)
テクノに恋した天気予報士 - うらつくの作品でこんなにも泣いた作品は初めてです、もうほんとに明日学校あるのに目が腫れるってくらい泣きました、本当に面白かったです。素敵な作品ありがとうございました (2020年7月28日 23時) (レス) id: f20013ee9d (このIDを非表示/違反報告)
えびまろ(プロフ) - 初めまして。この作品を読んでいると、信じてもらえず本当の気持ちも言えないもどかしさ、苦しみに気づいて支えてくれる優しさ、気づけなかったメンバーの後悔など様々な感情で胸がいっぱいになり、終始涙でした。素敵な作品をありがとうございました。 (2020年7月15日 0時) (レス) id: 79d7d19d55 (このIDを非表示/違反報告)
う(プロフ) - 初めまして、1から全て1気に読みました、ずっと涙が止まらなくて苦しくなるほどでした、こんなに感情移入したのは久々でした、素敵な作品をありがとうございました、最後に幸せになれて良かったです、お疲れ様でした (2020年7月10日 0時) (レス) id: ab44f752c1 (このIDを非表示/違反報告)
renyaxxx8(プロフ) - めちゃくちゃ泣きました。号泣しました!!素敵な作品ありがとうございます! (2020年6月29日 4時) (レス) id: 24c62dd776 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おれんじ | 作成日時:2020年5月8日 22時