51、緑 ページ4
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ab「……前にね、ラウールと話をしたの」
『…ん?ごめん、もう一回』
俺の声に振り返ったAは申し訳なさそうに俺の顔を見てくる。
こっちこそ突然ごめん、と謝ってもう一度同じ言葉を繰り返してから話を進めた。
ab「病院に付き添った日。Aを待つ間に聞いたんだ」
『…うん、』
ab「でもね、ほとんど教えてくれなかった」
あの日「聞きたいことがある」と言った俺に、ラウールは全てを悟ったような表情をした。
だけど、その口から語られたことはほんの僅かで。
ab「ラウが教えてくれたのは、お前が俺らを嫌っているわけじゃない、ってことだけ」
あとは全部、「俺から話すことじゃないです」って。
俺らが避けられてる理由も、
難聴が出るほどのストレスの原因も、
どうしてラウールは知っているのかも、
なにもかも、聞いてはみたけど答えてくれなかった。
ab「……俺ね、考えたんだ」
『…なにを?』
ab「こんな関係になっちゃった原因」
『…そっか、』
ずっと考えてた。
これまで何年も一緒に活動してきて、同じグループになって、一緒にデビューできて、
今になってなんでこんな…って。
デビューがきっかけで、環境とともに人が変わっちゃったのかな…なんて訳わかんないこと思い付いたりもした。
ab「思い出していくとね、…まあ、マネージャーだから当然なのかもしれないけど、…俺たちが険悪になる時はいつも、そこには雪村さんの存在があった」
『……それで?』
ab「でも雪村さんが悪い人にも思えなくて…、でもそうなるといつも悪者になるのはAで…、信じたいけど、…けど、距離が開いてるうちに、前まではわかってたはずの表情の変化とか意味とか、自信なくなって…」
俺の、まとまりがなくて言い訳じみた話を、真剣な表情で聞いているA。
話を終えると、何かを考えるように僅かに俯く。
そんな表情もまた、なにを考えているかがわからなくて不安になった。
『……亮平はさ。疑い深い割には、それらしい理由を聞かされると多少の矛盾は気付かなかったふりができるんだよ』
ab「……うん?」
『んー、簡単にいうと、おっちょこちょいってこと』
突然の話についていけなくて、俺は次の言葉を待つことしかできなかった。
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むち(プロフ) - 大号泣しました。。すっごく苦しくて感情移入しちゃって。素敵な作品でした。ありがとうございました (2021年4月27日 1時) (レス) id: fc08b9a7cc (このIDを非表示/違反報告)
テクノに恋した天気予報士 - うらつくの作品でこんなにも泣いた作品は初めてです、もうほんとに明日学校あるのに目が腫れるってくらい泣きました、本当に面白かったです。素敵な作品ありがとうございました (2020年7月28日 23時) (レス) id: f20013ee9d (このIDを非表示/違反報告)
えびまろ(プロフ) - 初めまして。この作品を読んでいると、信じてもらえず本当の気持ちも言えないもどかしさ、苦しみに気づいて支えてくれる優しさ、気づけなかったメンバーの後悔など様々な感情で胸がいっぱいになり、終始涙でした。素敵な作品をありがとうございました。 (2020年7月15日 0時) (レス) id: 79d7d19d55 (このIDを非表示/違反報告)
う(プロフ) - 初めまして、1から全て1気に読みました、ずっと涙が止まらなくて苦しくなるほどでした、こんなに感情移入したのは久々でした、素敵な作品をありがとうございました、最後に幸せになれて良かったです、お疲れ様でした (2020年7月10日 0時) (レス) id: ab44f752c1 (このIDを非表示/違反報告)
renyaxxx8(プロフ) - めちゃくちゃ泣きました。号泣しました!!素敵な作品ありがとうございます! (2020年6月29日 4時) (レス) id: 24c62dd776 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おれんじ | 作成日時:2020年5月8日 22時