十人十色の雪桜（６）

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その年の滝沢歌舞伎は10周年を迎えて、アニバーサリーイヤーとして稽古にも熱が入っていた。


慣れ親しんだ仲間で和気あいあいとしつつも、稽古中はピリついた真剣な雰囲気があった。



そんなある日、Aが一向に姿を見せない日があった。

もともと大学で授業を受けてから来る日だったとはいえ、予定時間を大幅に過ぎて、連絡もない。





滝「ふっか、まだ来ないの？」


fk「すみません、連絡入れてるんですけど…」

滝「返事もなし？」


fk「はい…」





こんなやりとりをもう何度もしている。

滝沢くんも怒ってるわけじゃなくて、たぶん、心配で少しイライラしてるんだと思うんだけど。


稽古場の雰囲気はいつもと違っていた。



でも、いつもより静かな稽古場だったからこそ、扉の外の騒がしさに気付けたんだと思う。





dt「……なんの音？」


iw「ん？……確かに騒がしいね」





気配に敏感な舘さんに続いて、俺らも外の異変に気づく。

どうやら、今日使わない備品を置いている隣のスタジオで何やら騒ぎが起こっているみたいだ。


さすがに気になって見に行けば、5人程の無名Jr.に囲まれて蹲る……いや、土下座してる？Aがいた。





nb「お前ら何してんだ」


＊「いやだってこいつのせいっすよね！？今日の稽古がピリついてんの！」


sk「それはっ、まあ、関係なくはないけど」


＊「こいつ、何言ってもただ謝るだけだし反省する気なさそうだったから、叱ってやろうと思って」





お前らAの何年後輩だと思ってんだ…と思ったけど、女だから、と見下す奴らはこいつらだけじゃないんだよな……


とりあえず、俺らが引き継ぐっていう形で研修生を稽古場に戻す。





fk「A、お前連絡もせずに何してたんだよ？」


『……』


iw「ねえ聞いてる？返事くらいしたら？」


『………っ、』


ab「ちょっと、！」





優しく、だけど叱るような口調で問いかけるふっかと照に、何の反応も示さないA。


キョロキョロと声を出す二人の顔を交互に見て、やがて、泣きそうな顔で部屋を飛び出してしまった。

突然すぎる動きに反応が遅れて、すぐにその姿を見失う。





ab「A、どうしちゃったの…」


sk「阿部ちゃん！Aはっ、」

ab「ごめん、見失った…」





滝沢くんに事情を説明して、俺らはAを探すことにした。


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