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好きの反対は無関心、愛と憎しみは紙一重なのだと言う。

だから嫌われてしまおうと思った。
仮にも好きな人に無関心でいれるのはつらいし、どうせ愛されないのなら、嫌われてしまおうと、憎まれようと、そう思った。


頬を叩かれた、と理解するのにそう時間はかからなかった。
彼なりに手加減はしたのだろう。
痛みは続かず、掌の感触が残る程度だった。

呆然として新一くんを見上げると、悲しそうにも憤っているようにも見える表情で、私を見つめていた。
どうしてそんな顔をするのだろう。

しばらく無言で見つめ合っていると、新一くんがぽつりと呟いた。

「……どうして」

消えてしまいそうな声だった。

「どうしてそこまで自分を卑下するんだよ」
「え……」
「私なんか、私みたいな、私とは違って!謙虚とかそういう問題じゃない、お前は自分を貶しすぎだ!」
「貶すなんて、そんなつもりないよ……」
「じゃあどういうつもりなんだよ、どういうつもりで自分をそこまで卑下するんだ?」
「どういう、って……」

テストで100点満点を取っても、菫の妹なんだから当たり前だ、と褒めてもらえなかった。
確かにお前は可愛いし美人だけど、菫のような華がない、と言われた。
察しもいいし頭もいい、要領もいいけど、菫ほどではない、と言われた。
そして、お前には、菫のような純朴さもあどけなさも、性格のいい可愛らしさもない、とまるで欠陥品のような扱いもされた。

それが普通だった。
比べられれば決まって私の方が劣っていると言われたし、それに間違いはなく、その通りであった。
所詮私は姉の劣化版でしかないのだ。

幼い頃から劣等感を植え付けられた。
それはぐんぐんと芽を伸ばして成長し、今に至る。

私は自分をバカにすることでしか自分の説明ができなくなったし、例えば自分の長点は?と聞かれれば、間髪入れずに、自分はクズで最低で、性格の悪い女である、と自覚しているところです、と答えるだろう。

それが普通なのだ。
この屈折した心理を消すことは出来ないし、実の姉に引け目を感じてしまうのも直せない。
きっと一生自信は欠如したままで、劣弱意識はなくならないのだ。

「……だって」

今更卑下するななんて言われたって、どうにもできない。
そもそも周りが強引にコンプレックスを抱えさせたくせに、そんなこと、勝手じゃないか。

「……だって、なんでって、私、……わたしは……」

自分を誇れた試しがないし、誰かの一番にもなれっこないのだ。

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未設定 - 世界一好きになれない夢主。胸糞悪い (2023年3月5日 17時) (レス) @page48 id: 438400fe3d (このIDを非表示/違反報告)
新一君しょうこ(プロフ) - はじめまして(新一君が大好きで名前申し訳ございません)前作のお話もとても大好きで、ありがとうございます胸にぐっときて涙が止まらず新一くんとこれまで悲しい思いをされた夢主様の未来お祈りしてやまないですこれからも応援させて頂いていますありがとうございます (2020年7月6日 13時) (レス) id: 84fa2ad3c6 (このIDを非表示/違反報告)
さち - すごくおもしろいです。後日談も気になりますが、このままでも十分ですよね。次回作も楽しみです。よろしくお願いします。 (2020年7月6日 13時) (レス) id: 45c5a17459 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - ああもう!お疲れ様でした!最高でした。途中途中で涙ぐみながらハッピーエンドで幸せいっぱい!夢主ちゃん良かったああ (2020年7月5日 19時) (レス) id: a1083db659 (このIDを非表示/違反報告)
オトハ - めっちゃ好きです。これからも無理せずに頑張ってください! なぜ高評価は一回しか押せないのだろうか、 (2020年6月15日 17時) (レス) id: ef611ec012 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:みやの | 作成日時:2019年12月15日 17時

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