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体育館に入ってからも工藤くんは絡んでくる。
いい加減しつこいと、殴ってもいいかしら。
工藤くんの友達は他の友達のところへ行ってしまった。
「お前、一乃Aって言うんだな」
「だからなに」
「なんですぐ教えようとしなかったんだよ」
「別に名前なんてどうでもよくない?」
「バーロ、よくねえよ。この世に名前がなかったら個の判別できなくなるだろ」
「この世ね、スケールでかすぎ」
ふ、と思わず笑った。
「な、お前のことなんて呼べばいい?」
「別に呼ばなくていいんだけど」
「つれないこと言うなよ、周りからはなんて呼ばれてんだ?」
「一乃妹」
「えっ」
「一乃妹、だけど」
「………」
少し意地悪しすぎただろうか。
工藤くんが黙ってしまった。
ちらりと工藤くんを横目見たら?イチノイモウト……?となんかの呪文みたいに唱えながら、難しい顔をしていた。
「冗談、普通に苗字でいいよ」
「……」
「工藤くん?」
どうしたの、と声をかけようとしたら、あ、一乃!と先に私が声をかけられた。
そちらを振り向くと、やたらチャラチャラした男子生徒二人が座り込んで、私を見ていた。
準備しなよ、と言いたいのを飲み込んで、なに、と返す。
「あのさー、お前に俺らのID渡してから連絡くるの待ってるんだけどよー」
IDというのはチャットアプリのIDのことだ。
2ヶ月ほど前にこいつらからそれをもらった。
「一向に来ないんだよな、連絡。本当に渡してくれたのか、おねーさんに」
もちろん私にではなく、姉に。
「渡したよ」
「じゃあなんで来ねえんだよ」
知るか。
「……お姉ちゃん、大学忙しそうだから」
「ふーん、まあそりゃそうか、スミレさんだもんな」
「バーカ、てめーが菫先輩の何知ってるって言うんだよ」
「あ?うるせーな」
二人でギャハギャハ下品に笑いあってるのを見て、思わずはあ、とため息が出る。
こういうノリの人は苦手だ。
「もういい?」
「おう、ありがとな」
「サンキュー、一乃妹!」
「……」
いや、タイミング。
彼らは何気なく、本当になんの気もなく一乃妹と言ったのだろうが、今工藤くんの前で言って欲しくなかった。
聞き逃してくれなかっただろうかと横を見上げて見てら、当たり前だがそんなわけにはいかなかった。この距離なのだから当然だ。
「呼ばれてるじゃねえか、一乃妹って」
「……たまにだし、慣れてるからいいの」
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未設定 - 世界一好きになれない夢主。胸糞悪い (2023年3月5日 17時) (レス) @page48 id: 438400fe3d (このIDを非表示/違反報告)
新一君しょうこ(プロフ) - はじめまして(新一君が大好きで名前申し訳ございません)前作のお話もとても大好きで、ありがとうございます胸にぐっときて涙が止まらず新一くんとこれまで悲しい思いをされた夢主様の未来お祈りしてやまないですこれからも応援させて頂いていますありがとうございます (2020年7月6日 13時) (レス) id: 84fa2ad3c6 (このIDを非表示/違反報告)
さち - すごくおもしろいです。後日談も気になりますが、このままでも十分ですよね。次回作も楽しみです。よろしくお願いします。 (2020年7月6日 13時) (レス) id: 45c5a17459 (このIDを非表示/違反報告)
宙(プロフ) - ああもう!お疲れ様でした!最高でした。途中途中で涙ぐみながらハッピーエンドで幸せいっぱい!夢主ちゃん良かったああ (2020年7月5日 19時) (レス) id: a1083db659 (このIDを非表示/違反報告)
オトハ - めっちゃ好きです。これからも無理せずに頑張ってください! なぜ高評価は一回しか押せないのだろうか、 (2020年6月15日 17時) (レス) id: ef611ec012 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みやの | 作成日時:2019年12月15日 17時