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気分は最悪だった。
何でって、新一くんへの恋心を自覚してしまったからだ。
自分がこんなにも意志薄弱だとは思わなかった。
もう誰も好きになんてならないと決めたのに。
懲りずに恋しただけでも最悪なのに、更に憂鬱になったのは、恋した人が人だったからだった。
工藤新一には、幼い頃からの、大事な大事な女性がいる。
その女性が自分が好きではない毛利蘭だという事実は、気分をどん底に落とした。
好きではないというか、ぶっちゃけ嫌いの部類に入る。
何が嫌いなのかと言うと、毛利蘭は私のような作ったいい子ちゃんとは違い、純粋ないい子だからだ。
愛されて生きてきたんだろうとわかる素直な性格も、あの嘘偽りない無垢な笑顔も、無意識に出ている柔らかい雰囲気も、何もかもが、自分の癪に触った。
嫌う理由が理不尽すぎるというのはわかっているが、とにかく私はそういう人間が好きにはなれなかった。
しかし、だからこそ、自分は彼に好意を持ってもらえるような人間ではないということも、また事実なのだろう。
なぜなら私は、私の性格は、新一くんの好きな毛利蘭とは正反対だからだ。
そもそも自分で自分のことを好きになれない人間を、他人が好きになんてなれるわけがない。
自分はまたもや厄介な恋をしてしまった。
叶わないとわかっている不毛な恋を続けるのは馬鹿らしいと思う反面、これはこれでいいかもしれない、と思い始めていた。
つまり、この気持ちがひっそり静かにフェードアウトするのを待つのではなく、このまま一生、片想いをズルズル引きずって生きていこう、と。そう考えた。
今度こそこれを、最後の恋にしよう。
一生終わることのない、呪いみたいな恋だ。
恋心に気づかれれば振られるのはわかっているので、また惨めな思いをしないように、新一くんへの想いは徹底的に隠さなければ。
大丈夫、隠し事は得意だ。
これまでと変わらぬように、バレてしまった本性をほんの少し晒しながら、適当に付き合えばいい。
幸いなことに、私たちは高校三年生だ。
将来のための大事な時期で、この進学校で恋なんてものにうつつを抜かしている場合ではない。
彼は恐らく東都大学とか、頭のいい大学に通うだろう。私も同じような大学に進学することもできるが、それはないと言いきれる。
なぜなら私は家を出たい一心で、都外の大学を志望し一人暮らしをするつもりなのだ。
新一くんとの付き合いも、高校限りだろう。
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未設定 - 世界一好きになれない夢主。胸糞悪い (2023年3月5日 17時) (レス) @page48 id: 438400fe3d (このIDを非表示/違反報告)
新一君しょうこ(プロフ) - はじめまして(新一君が大好きで名前申し訳ございません)前作のお話もとても大好きで、ありがとうございます胸にぐっときて涙が止まらず新一くんとこれまで悲しい思いをされた夢主様の未来お祈りしてやまないですこれからも応援させて頂いていますありがとうございます (2020年7月6日 13時) (レス) id: 84fa2ad3c6 (このIDを非表示/違反報告)
さち - すごくおもしろいです。後日談も気になりますが、このままでも十分ですよね。次回作も楽しみです。よろしくお願いします。 (2020年7月6日 13時) (レス) id: 45c5a17459 (このIDを非表示/違反報告)
宙(プロフ) - ああもう!お疲れ様でした!最高でした。途中途中で涙ぐみながらハッピーエンドで幸せいっぱい!夢主ちゃん良かったああ (2020年7月5日 19時) (レス) id: a1083db659 (このIDを非表示/違反報告)
オトハ - めっちゃ好きです。これからも無理せずに頑張ってください! なぜ高評価は一回しか押せないのだろうか、 (2020年6月15日 17時) (レス) id: ef611ec012 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みやの | 作成日時:2019年12月15日 17時