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ははは、と乾いた笑い声を上げたら、スマホを持つ手を触られそうになって思わず後退りしたら、トン、と背中に何かあたった。
しまった、誰かにぶつかってしまったか。
すみません、と謝りながら振り向いたら、不思議そうな顔で工藤くんが私を見下ろしていた。
げ。よりにもよってこの人か。
「ごめん工藤くん、邪魔だったよね」
「いや、大丈夫だ」
「よお工藤!」
「何してんだよお前ら、通行の邪魔だぞ」
「わりーわりー!」
全く悪びれる様子もなくへらへら笑ってる。
「悪いと思ってんならどけよ」
「あ、じゃあAちゃんがID教えてくれたらどくわ!」
「はっ?」
何がじゃあだ何が!
思わず素のは?が出てしまった。
どこまで馬鹿なのかこの人たちは。
どけって言われてるんだから早くどいてよ。
はあ、とため息をついた私をちらりと工藤くんが視線を向けて、男たちに言う。
「Aは関係ねーだろ、さっさとどけ」
「そんな怒んなってー」
「Aが教えてくれるだけでいいんだぜー?」
「工藤だって知りたいだろ?」
チンピラか。思わずツッコミたくなった。
どうして私が連絡先を教えるのとどくのが関係あるのか甚だ疑問だが、これ以上工藤くんにも周りにも迷惑はかけられないため、諦めて渡してしまおうか。
嫌だけど。本当は心の底から嫌だけど!
「わかった、教えるから先に」
「A」
駄目だ。
工藤くんが呟いた。
あまりにも真剣な瞳に、少しドキッとした。
「でも、めんどくさいからもう、」
「ダメだって、絶対教えるなよ」
「………」
じゃあどうしろと。
工藤くんをじろりと見上げると、工藤は私の腕を掴んで、男たちの肩をグイッと押しながら端を避けていった。
なんだよ工藤ー、つまんねーなー、とブーイングが聞こえるが、工藤くんはそれを無視してどんどん歩いてく。
「工藤くん」
「……」
「工藤くん、もういいよ」
私が立ち止まったら、工藤くんも立ち止まった。
「助けてくれてありがとう、助かった」
「……ああ」
「私がとっとと連絡先教えてればよかったんだよね、迷惑かけてごめん」
「……は?」
「連絡先教えることくらいどうってことないのに、なんで渋ったんだろ」
「でもお前は嫌だったんだろ?」
「そりゃ嫌だけど、もし連絡来ても、よく考えれば無視すればいいだけだし」
「そうだけど……そうじゃねえだろ……」
「ほんとごめんね、次もこういうのあっても無視していいから」
じゃあね、といって固まった工藤くんの横を通り過ぎていく。
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未設定 - 世界一好きになれない夢主。胸糞悪い (2023年3月5日 17時) (レス) @page48 id: 438400fe3d (このIDを非表示/違反報告)
新一君しょうこ(プロフ) - はじめまして(新一君が大好きで名前申し訳ございません)前作のお話もとても大好きで、ありがとうございます胸にぐっときて涙が止まらず新一くんとこれまで悲しい思いをされた夢主様の未来お祈りしてやまないですこれからも応援させて頂いていますありがとうございます (2020年7月6日 13時) (レス) id: 84fa2ad3c6 (このIDを非表示/違反報告)
さち - すごくおもしろいです。後日談も気になりますが、このままでも十分ですよね。次回作も楽しみです。よろしくお願いします。 (2020年7月6日 13時) (レス) id: 45c5a17459 (このIDを非表示/違反報告)
宙(プロフ) - ああもう!お疲れ様でした!最高でした。途中途中で涙ぐみながらハッピーエンドで幸せいっぱい!夢主ちゃん良かったああ (2020年7月5日 19時) (レス) id: a1083db659 (このIDを非表示/違反報告)
オトハ - めっちゃ好きです。これからも無理せずに頑張ってください! なぜ高評価は一回しか押せないのだろうか、 (2020年6月15日 17時) (レス) id: ef611ec012 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みやの | 作成日時:2019年12月15日 17時