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たった一人の男友達 ページ46

「海外って、具体的にはどこ?」
「俺もまだ詳しく聞かされてないんだけど、ヨーロッパだって」
「そうなんだ……」

大山さん達のこととか新一と蘭ちゃんのこととか、色んなことが嫌で、早く卒業したい、って思ってたけど。

卒業したら、遥樹くんには会えなくなるんだ。
そう思ったら、一気に悲しくなってきた。

「いなくなっちゃうの……?」
「多分ね」
「やだ……」
「え?どうして?Aちゃんには工藤くんがいるでしょ?」
「……」
「なんで嫌なの?」
「……だって私、今までたくさん遥樹くんに助けてもらったし……」
「うん」
「遥樹くん、私の少ない友達の一人だし……」
「……友達ね」
「私ね、ホントに友達いないんだよ」
「……うん」
「数少ない大事な人がいなくなっちゃうのは、つらいよ……」
「Aちゃん……」

涙が出そうになって、慌てて堪える。
「でも俺、昨日あんなこと言った」
「……あのね、私ね、多分気づいてた」
「え?」
「私が新一と喧嘩して、教室で泣いた日あったでしょ?」
「ああ……工藤くんが休んだ日……」
「そう、その日ね、新一がいるときは聞こえなかった私の悪口が、たくさん聞こえたの」
「……」
「みんな私を見てくるし、なんで今日はこんなに居心地悪いんだろう、って不思議だった」
「うん」
「きっとそれはね、新一が私を守ってくれてたからなの」
「……うん」
「そのときは、そんなことありえない、って思ってたけど、昨日遥樹くんに言われて気づいた」
「工藤くんは、守ってるんじゃなくて、蓋をしてるだけ、ってこと……」
「そう」

きっと私は、あのときは、受け入れられなかったんだ。新一は蘭ちゃんのことが好き、って思い込んでたから。

今もそう思ってるけど、新一が周りの視線を遮ってくれてたってことには、気づけた。

「だから、気づかせてくれて、ありがとう」
「そんな、お礼なんて……俺の言い方、よくなかったのに」
「まあ、ちょっとショックだったけど……でも、大丈夫」
「……そっか」

二人で、ふふって笑い合う。
遥樹くんが、嬉しそうに目を細めた。

「Aちゃん、卒業まで、よろしくね」
「こちらこそ!いっぱい思い出作ろう!」
「うん!」

遥樹くんは、私のたった一人の男友達。
お喋りするのが楽しくて、好きなものとか趣味も似てて、波長も同じで。

そんな大切な存在がいなくなるのは悲しいけど、いなくなることに絶望するんじゃなくて、お別れまでの、残された今を楽しもうって、そう思えた。

好きだったんだよ→←海外に拠点



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極・吹雪姫 - ちょっとびっくりしたのが、弟の瑞紀(みずき)と私の「ミズキ」が被ったことだわね。 (2019年5月2日 20時) (レス) id: c4455a25af (このIDを非表示/違反報告)
極・吹雪姫 - ごめんなさい、本当に途中で泣きそうになったわ。「泣く」ですわ。泣いたページ。 (2019年5月2日 20時) (レス) id: c4455a25af (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - こいつらまだ小学生だった…!なんつー濃い恋愛を…!この小説すごく好きです!遥樹くんのちょっとした嫉妬がこぼれて、それを見てとても切なくなる。ヒロインの気持ちはよく理解できるけど、やっぱり遥樹くんがいちばん好きです! (2019年3月11日 10時) (レス) id: 7ac5223945 (このIDを非表示/違反報告)
松野かほ(プロフ) - 遥樹くんの読み方を今初めて知った← (2019年2月13日 15時) (レス) id: 45fd1e6358 (このIDを非表示/違反報告)
みお - この小説好きです!正直言うと新一より遥樹くんの方が好きだったのでくっついて欲しかったなぁって思ってます() (2018年6月8日 19時) (レス) id: 0646f7c2e0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:みやの | 作成日時:2018年3月1日 22時

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