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仲直り ページ15

「……新一、ありがと……」

落ち着いて、ようやく涙もとまった。
泣き終わるまで背中をさすってくれた新一は、晴れやかに笑ってる。

久しぶりに、新一に抱きしめられた。
ああ、やっぱり。
ぎゅっとされて、安心するのは新一だけ。

「なあ、A」
「なに?」
「俺、今日、お前ん家で飯食う」
「え!」
「最近食べてなかったし、いいだろ」
「うん……いいと思う……」

よし!と笑う新一。
つられて、ふふ、と笑みがこぼれた。

「じゃあ、帰るぞ」
「うん。お母さんたち、心配してるかなぁ」

気づけば時間が経っていて、太陽はすっかり沈んでる。街灯の明かりだけに照らされる道。

いくぞ、と新一に手をひかれる。
久しぶりに触れた新一の温もりに、嬉しくなって、また泣いた。

「おい!今度はなんだよ!」
「うれしくて……」
「嬉しい?」
「うん……」
「……?」

新一が、なんだかわからなそうに、首をかしげた。

「ふふ、なんでもない」
「そうか?」
「うん、帰ろう」
「おう」

重なる手を握り返す。
そしたら、新一の握る力が、強くなった気がした。


二人で家に帰ったら、お母さんに怒られた。

「こら!今何時だと思ってるの!」
「ごめんなさい……」
「今度遅くなったらご飯抜きよ!」
「気をつける……」

鬼みたいな顔をしてるお母さんに怯える。
全く、とため息をついて、笑った。

「仲直りはできたのね?」
「うん」
お母さんの優しい声に、じわあっと涙がにじんだ。

「おまえまた泣くの?」
「最近泣いてばっかりねー」
「美琴さん、こいつこんなに涙もろかったっけ」
美琴というのは、私のお母さんの名前。

「泣き虫だとは思ってたけど、ここまでだったかしら」
「だってぇ……」
「Aね、昨日すごい思い悩んでたのよ」
「思い悩む?」
「新一にひどいこと言っちゃった!って、泣き腫らした目で」
「ちょっとお母さん!」
「新一のこと大好きなのに!って」
「やめてよ!」
「Aそんなこと言ったのか?」
「言ってたわよ!」
「お母さん!」

ぶわあっと顔に熱が集まる。
やだ。勝手に人のことをペラペラと!

「じゃ、お母さんはご飯の用意してくるわね。手洗ってらっしゃい!」
自由すぎるお母さんがなんだか。
呆気に取られる。
流れる沈黙に、恥ずかしくなる。

「あー!」
弟が指をさしながら来た。
「瑞紀!」
「新一だ!」
「呼び捨て!新一兄ちゃんだろ!」
「しんいちー!」
「コラ!」

きゃーとか、笑ってる。
その日は、久しぶりに楽しかった。

読書の秋→←ごめんね



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極・吹雪姫 - ちょっとびっくりしたのが、弟の瑞紀(みずき)と私の「ミズキ」が被ったことだわね。 (2019年5月2日 20時) (レス) id: c4455a25af (このIDを非表示/違反報告)
極・吹雪姫 - ごめんなさい、本当に途中で泣きそうになったわ。「泣く」ですわ。泣いたページ。 (2019年5月2日 20時) (レス) id: c4455a25af (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - こいつらまだ小学生だった…!なんつー濃い恋愛を…!この小説すごく好きです!遥樹くんのちょっとした嫉妬がこぼれて、それを見てとても切なくなる。ヒロインの気持ちはよく理解できるけど、やっぱり遥樹くんがいちばん好きです! (2019年3月11日 10時) (レス) id: 7ac5223945 (このIDを非表示/違反報告)
松野かほ(プロフ) - 遥樹くんの読み方を今初めて知った← (2019年2月13日 15時) (レス) id: 45fd1e6358 (このIDを非表示/違反報告)
みお - この小説好きです!正直言うと新一より遥樹くんの方が好きだったのでくっついて欲しかったなぁって思ってます() (2018年6月8日 19時) (レス) id: 0646f7c2e0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:みやの | 作成日時:2018年3月1日 22時

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