ナイフ ページ4
小学校に入学した。
あいかわらず、新一と蘭ちゃんは一緒にいた。
私も仲良くしてたけど、心の中で、いつも叫んでた。
わたしの新一くん、とらないで!
心の内のモヤモヤは、広がるばかり。
私たち以上に仲良しな二人を見るのがつらくて、私は他のグループの子と行動することが多くなった。
私のこと嫌いになっちゃったの?って蘭ちゃんに聞かれても、そんなことないよ、って笑えば、何も問題なんて起きなかった。
学校で一緒にいなくても、登下校は新一と一緒。
新一と二人で、帰り道を歩く。
「それでよ、蘭のやつ、ひでーんだ」
「……そうなんだ」
会話はいつも、蘭ちゃんのこと。
私は新一のことが大好きなのに。
新一の口からは、蘭という名前しか出てこない。
好きな人の、好きな人の話をする。
こんな拷問って、ある?
ひどい。ひどいよ。
つらすぎる。
「……いたい」
そう呟けば、新一は私を心配そうな顔で覗く。
「痛い?どこだ?どっか怪我してんのか?」
「いたいの……」
「どこだ?」
私の足や手を見る新一。
ちがうよ。
痛いのは、体なんかじゃなくて、心。
あなたの言葉は、時にナイフとなって、私の心を突き刺すの。
……もういや。
もう、むりよ。耐えられない。
いっそ二人のことを、嫌いになれたら、どれだけ楽か。
だけど私は、二人の優しさを知ってるから、嫌いになんてなれなかった。
だから考えた。
嫌えないなら、嫌われればいい。
「A!」
「……」
「……A?」
話しかけられても、聞こえないフリをして、無視した。
私の冷たい反応に困惑する新一を見た。
同じことを蘭ちゃんにやったら、すごく傷ついてた。
今度は友達を傷つけるのに耐えられなくなって、すぐに無視なんてやめた。
嫌われたいけど、嫌われたくない。
二人のことは大好きだけど、うまくいかないでほしい。
好きな人の幸せを願えないなんて。
なんてみにくいの。
矛盾する気持ちに、ひどく腹を立てた。
私は私を、大嫌いになった。
「新一!」
「どうした、蘭」
お互いを愛おしいものでも見るかのような、二人の瞳。
どれだけ心がズタズタになっても、涙は出なかった。もう諦めていたのかもしれない。
私が泣いても、新一は戻ってきてくれない、なんて。
「Aも、こっちこいよ」
新一の中途半端な優しさが、私を発狂寸前まで苦しめてるなんてこと、きっと新一は、気づかない。
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極・吹雪姫 - ちょっとびっくりしたのが、弟の瑞紀(みずき)と私の「ミズキ」が被ったことだわね。 (2019年5月2日 20時) (レス) id: c4455a25af (このIDを非表示/違反報告)
極・吹雪姫 - ごめんなさい、本当に途中で泣きそうになったわ。「泣く」ですわ。泣いたページ。 (2019年5月2日 20時) (レス) id: c4455a25af (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - こいつらまだ小学生だった…!なんつー濃い恋愛を…!この小説すごく好きです!遥樹くんのちょっとした嫉妬がこぼれて、それを見てとても切なくなる。ヒロインの気持ちはよく理解できるけど、やっぱり遥樹くんがいちばん好きです! (2019年3月11日 10時) (レス) id: 7ac5223945 (このIDを非表示/違反報告)
松野かほ(プロフ) - 遥樹くんの読み方を今初めて知った← (2019年2月13日 15時) (レス) id: 45fd1e6358 (このIDを非表示/違反報告)
みお - この小説好きです!正直言うと新一より遥樹くんの方が好きだったのでくっついて欲しかったなぁって思ってます() (2018年6月8日 19時) (レス) id: 0646f7c2e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みやの | 作成日時:2018年3月1日 22時