春、来る ページ22
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「えっと、香坂くん、まだアイス取ってない……よね」
緊張で軽く言葉を詰まらせながら、香坂くんに問いかける。
目線はいつまで経っても交わることはなく、私は床と見つめ合っている。
取ってないけど……と、切れ味の悪い返事に、本当に分け合うべきかと迷いが生じた。
だって、嫌がられはしないかもだけど、変な人って思われるかもしれないじゃん。
そうやって、うじうじと悩んでいれば自然と生まれる沈黙。
やっぱり早めに切り出すべきだったと後悔するも、沈黙の気まずさに唾を飲み込む。
先に沈黙を破ったのは香坂くんの方だった。
「何か、言いたいことあるんやないの」
その口調は、言葉こそ少し冷たいけど、声色は穏やかでいつもよりずっと柔らかく。
まるで、引っ込み思案な子供に話しかける様な雰囲気をまとっていた。
「嫌、だったら良いんだけど…、はんぶんこしませんか……」
尻すぼみではあるが、今度はしっかりと目を見て伝えることが出来た。
たかがアイス1つで、たかがはんぶんこのお誘いごときで、こんなにも緊張する事があるだろうか。
こんな事で緊張していることに更に恥ずかしさを覚え、無限ループの羞恥が顔を熱くさせた。
「ふっ、そんな事でそんな緊張してたん」
ドキッと、心臓が大きく波打つのが分かる。
ふっ、って。
今、笑った＿＿＿？
ええよ、半分ちょーだい。
そう言った目の前の香坂くんは、今までないほどの優しい表情をしていた。
柔らかく、耳触りのいい特徴的な声は、今もクスクスと喉を鳴らして笑っている。
羞恥でもなく、緊張でもなく、ただ握りしめていたチューペットは確実に溶け出しているのではと思うほどに。
私の心臓はいつも以上に血液を巡らせ、身体はあり得ないほどの熱を帯びていた。
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＿＿＿＿＿＿＿＿＿
余談ですが、私はパッキンアイス派です。
我が家ではポッキンアイスや、チューチューとも言います。
地域差ってありますよね。
終わり
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空汰(プロフ) - リリィ♪さん» ありがとう御座います！頑張ります！ (2019年7月11日 21時) (
レス) id: 388d3588fb (このIDを非表示/違反報告)
リリィ♪ - とても面白いです！私自身も人見知りなので感情移住出来て楽しく読めますし、続きも気になるのでこれからも頑張ってください！楽しみにしてます！ (2019年7月11日 1時) (レス) id: 250ee9a7d8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：空汰 | 作成日時：2019年7月9日 0時
