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-山��side-
俺はまず名を名乗った。
三凪さんがいきなり"丞"と呼ぶことに戸惑ったが、三凪さんの人柄をあらかじめ聞いていたので、納得した。
三凪さんが助けたという少年は、傷一つなかった。
ただ汚れていたため体を拭いて、親のもとへ帰らせた。
三凪さんは逆に、少年をかばっていたのか、傷だらけだった。
まず汚れを取るために体を拭かなければと思い、三凪さんに服を脱ぐよう言った。
｢……お風呂入る｣
三凪さんは少し顔を赤らめてそう言った。
｢傷がしみると思います。菌も傷口に入ったらいけませんし……｣
そう言うと、三凪さんは困ったように俺を見た。
｢痛いの平気｣
｢俺は慣れているので何とも思いません。脱いでいただけませんか｣
緊張を解くように優しく諭すと、一瞬ためらったのち、ゆっくりと上だけ脱いだ。
桶に入れた水で布を濡らし、肩から拭いていく。
肩の力が入る三凪さんは、
｢うぅ……｣
と恥ずかしそうに唸った。
背中を吹き終え、今度は前を拭くためこちらを向かせる。
三凪さんが更に緊張してしまわないように、俺は三凪さんの顔を見ないようにした。
｢丞、丞｣
三凪さんは、俺の布を持った右腕を弱々しい力で掴んだ。
俺は顔を上げる。
｢まだ……？｣
三凪さんの顔は、すごく赤くなっていた。
耳まで赤く、下唇を噛み締めながら潤んだ瞳でこちらを見つめた。
胸がドクンと大きく鳴った。
容姿が整っている方だったので、そんな顔をされてしまったら、俺であっても顔が赤くなった。
｢な、慣れてるって言った｣
そんな俺を見て、慌てて三凪さんは俺を責めた。
｢……すみません｣
謝る他なく、俺はとりあえず顔を逸らした。
そして俺の腕を掴む手を優しく退けて、また拭き始めた。
しかし、透明感のある肌を触り柔らかさを手の先に感じて更に体温が上がった。
｢丞、丞、もう終わり｣
三凪さんは恥ずかしそうに俺から離れた。
一度意識すると、意識しないようにするのが難しい……。
半ば強引に拭く作業が終わり、俺は傷口を手当しようと腕を掴んだ。
｢……ん？｣
傷が、なかった。
いや、なくなっていた。
跡形もなく。
戸惑う俺を見て三凪さんは、
｢A、すぐ治るから｣
そう言ってから服を着終え、立ち上がる。
｢は、はい｣
｢ありがとう！｣
｢いえ……｣
まだ意識してしまっている俺は三凪さんの顔を見ないようにしながら返事をした。
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入華(プロフ) - 意見、質問、感想などがあれば書いてくださると嬉しいです！ (2016年9月16日 6時) (
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作者名：入華 | 作成日時：2016年9月11日 13時
