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今日の巡察は原田左之助。
周りの者たちは怖がって隠れているが、もうそれも慣れてしまった。
朝の散歩とでも思えば気が楽だ。
原田はひとつ大きなあくびをして、のびのびと背伸びをした。
｢なんだと！｣
そのとき、ゆったりとした雰囲気をぶち壊すかのように、怒声が聞こえてきた。
どうやらななめ前の茶屋からのようで、原田は急ぎ足でそこへ向かった。
｢団子を食べたら、お金を払うんだよ｣
原田が茶屋へ入ると、焦る店主と、野次馬と。
そしてその中心にいる人物。
すこし驚いた。
酔っ払い同士の喧嘩かと思いきや、そこには１人の酔っ払いと、平助と同じくらいの背丈の女子が立っていた。
｢おいおい、どうなってんだ｣
店主に話を聞くと、
｢へ、へえ、実はその男がお金を払わずに店を出ようとしまして、呼び止めたんですがあのなりようで……そのときあの子が……｣
と店主もすこし戸惑っているようだった。
勇気のあるやつもいたんもんだ。
｢おい。食ったもんの代金くれえ払え｣
男にさとすように言うと、
｢俺は武士だ！ これくらい感謝してもらわねえとなあ｣
お酒が要因と思われる赤い顔で、卑下た笑い声をあげた。
｢武士だから感謝されるの？ あなたは何かをしたの？｣
少女は男に聞いた。
皮肉でもなく、ただ純粋に気になったようだ。
原田はその度胸に面食らった。
｢てめえ！｣
男が斬りかかろうとしたところを、自前の槍ではね返す。
男は吹き飛ばされるように倒れた。
｢くそ……！｣
原田の力に勝てないと感じ、男はふらふらした足取りで走り去った。
男が見えなくなると、野次馬も散り散りになっていった。
｢お兄ちゃんありがとう｣
少女がそう言いながら原田に歩み寄る。
｢お兄ちゃん。いっしょにお団子食べる？｣
｢かわいいお誘いだな｣
ふっと原田は微笑んだ。
｢だが今は巡察中なんだ。すまねえがまた今度な｣
そう言い、少女に背を向けようとしたとき、勢いよく抱きつかれた。
｢Aも行く！｣
そう言ったきり、原田が何度さとしても離さなくなってしまった。
まいったな、と眉を下げて原田は少女の頭に手をのせた。
｢いっしょに歩くだけだぞ｣
少女はさらに力強く原田を抱きしめた。
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入華(プロフ) - 意見、質問、感想などがあれば書いてくださると嬉しいです！ (2016年9月16日 6時) (
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作者名：入華 | 作成日時：2016年9月11日 13時
