死にたがりの居場所【identityV】

8.クレーム ページ11

ひどい...ひどすぎる.....



Aは自分が与えられた外在特質(スキル)に不満だった。



普通に走り回るのもキツイのに60秒続けろと？

芸術的センスがあるから他の四人がいる中で歌えと？

筆で体なぞるのはいいとして....

心音がないのに頑張って逃げろと？



不可能&不利すぎる自分の特質にAは絶望しすぎて笑った。



『変わり者』にしてはしょうがないと思っている。


確かに危険と隣り合わせこそ興奮するものはないし、オカルトやエグい物が大好きだったちょいクソ野郎なウチだもの....


この特質は合っていると思う。



だがしかし！！！




ウチは断じて、芸術的センスはないと思っている。

たしかに美術部で賞を取ったことあるし、音楽で成績5以外取ったことないし、どちらもみんなから「上手い」だの「羨ましい」だの言われていた。


だが、そんなの客観的な意見に過ぎない。



ウチからすれば、あんなクソみたいな絵とクソみたいな歌が評価されることを望んでないし、上手くいったなんて微塵も思ってない。


全部「失敗作」だ。




自分も。自分が作った作品も。




Aは自分のページを睨みつけながら乱暴に本を投げたい衝動を抑え、本を閉じた。

胃から湧き上がってくるムカムカを何かに当てようとした時だった...





コンコン...






昨日ぶりにドアがノックされた。

ナイチンゲールだろうか？



Aのイライラは引っ込み、期待へと変わった。


ナイチンゲールだったとしてもきっとゲームのことだろう。

とりあえずAは不利な状態だとしてもゲームに参加してみたかった。


だからこそ、扉の先にいる人物に期待しているのだ。



ゆっくりとドアノブを回し、引くとそこにいたのは....！









ゴーン....



ドアを開けたと同時に鐘の音が鳴り響いた。


そこでAの意識は闇の方へと引きづられて行ったのだった。







・







『ん.....』

「起きて」

肩を揺すられ、目を覚ませば、Aはいつのまにか椅子に座り机に突っ伏した格好で寝ていたらしい。



いや、寝ていたらしいではない。



Aは自分を起こした本人とその後ろからこちらを見つめる他二人を見て、心臓が高鳴った。



「あなたが新しいサバイバーね。私はエミリー・ダイアー。こう見えても医師よ。」


A起こした看護婦のような水色の服を着た女の人は紛れもなく、エミリー・ダイアー。






ウチがよく使っていたサバイバーだ。

9.サバイバー→←7.外在特質

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す