＊１３０ ページ10
ふぅ、と深呼吸をすると、前の二人の緊張が伝わってきた。
顔を見ることは出来ないけど、せめて、言葉だけは、伝えたい。
「……そういうこと、だったってことでいいの？」
自分でも分かる位、震えていた。
口元、それに肩、太ももの上に置いた手まで。
緩く、でも確かに、震えている。
「……A」
「……雅紀くん、私が説明する」
雅紀が何か言おうとした時、ミナがそれを制した。
今二人はどんな顔をしているんだろう。
「A、ちゃんと二人の顔見て」
部長が私の手の上に、自らの手を重ねた。
温かい。
じんわりと心に染み入る。
「大丈夫だから」
部長の優しい声が聞こえて、ようやく、その顔を見れた。
……あぁ、しっかり見ると。
ミナはほんの少し、前よりふっくらしている。
代わりに雅紀はやつれたかな。
斉藤さんも言ってたもんな。
部長の重ねられた手の、小指を、自分の親指で少し強めに握った。
「A……本当に、ごめんなさい」
ミナが、頭を下げた。
雅紀も、少し時間を置いて同じ動作をした。
「こっちに来る前……Aに会ったよね」
「……うん」
「あの時、本当の事を話そうと思った……でも、言い出せなかった」
「……」
「怖かった。言い訳って分かってるけど、Aに軽蔑されるのが……嫌われるのが……」
「……」
「いつかはバレることって、心のどこかで分かってたのに……本当に、ごめんなさい……」
つぅ、とミナの綺麗な頬に、涙が垂れる。
泣きたいのは、本当に泣きたいのはこっちだ。
……でも、そう言えないのは、ミナは私の友達だからだ。
「……最初から、話していい？」
「……全部、知りたい。嘘、つかないで」
「うん……」
ミナが、そっと膨らんでいるお腹に手をあてた。
あぁ、お母さん、になるんだなぁ。
……きっと、雅紀は、お父さんに。
ミナは、最初から、最後まで、話してくれた。
私がミナに雅紀を紹介した時、あの時はまだ全く関係は無かったこと。
その後、ミナが彼氏と街中で言い合いになった時に、偶然通りかかった雅紀が助けてくれたこと。
彼氏にDVまがいのことを受けていると雅紀に相談して、雅紀が緊急事態の時に連絡して、と連絡先を渡したこと。
夏の暑い日、彼氏の暴力から必死に逃れ、雅紀に連絡をして、雅紀の家に逃げ込んだこと。
……そして、その場の勢いで、関係を持ったこと。
全て、私の知らない所で行われていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1477人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
cori(プロフ) - 藍さん» はじめまして！コメントありがとうございます。やっと出会えた…？！何て嬉しいお言葉（ ; ; ）ありがとうございます。色々続きも書いてますので、良かったらまた読んでください(^○^) (2019年7月6日 0時) (
レス) id: d86fdce482 (このIDを非表示/違反報告)
藍(プロフ) - 初めまして。ステキな物語をありがとうございました。Sさん側の味方がちゃんといて、安心して読めました。やっと出会えた夢小説でした。ありがとうございました。 (2019年7月5日 16時) (レス) id: c6f01ba164 (このIDを非表示/違反報告)
cori(プロフ) - きみきみさん» 初めましてコメントありがとうございます！櫻井部長にキュンキュンしていただけて嬉しいです〜！ミナちゃんはこのお話の中で唯一の黒い存在なのでその感情は正しいと思います…悪い子ではないんですけど…ね(T . T) (2019年5月22日 17時) (レス) id: d86fdce482 (このIDを非表示/違反報告)
きみきみ(プロフ) - 初めまして！一気に読ませて頂きました。泣いたりキュンキュンしたり感情が忙しかっです(笑)櫻井部長が本当に素敵でした！ただ、ミナは…最後までやっぱり好きにはなれなかった色々と…うん。続きを楽しみに読みます！ (2019年5月21日 15時) (携帯から) (レス) id: 28c39bc336 (このIDを非表示/違反報告)
cori(プロフ) - ともさん» 初めまして！一日で…！嬉しい！二宮くんの掛け合いは、軽くない話の中で一種の清涼剤でした。ミナについては…多少仰るようなこともあるんだろうな、と思います。純粋な雅紀くんだからこそ…でもそこがいいんですよね…続きも書いてますので良かったら(^ ^) (2019年4月26日 0時) (レス) id: d86fdce482 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：cori
| 作成日時：2019年3月10日 13時
