＊１３２ ページ12
雅紀の話も聞きたい、とミナには途中で席を外してもらった。
レモネードはまだ半分以上残っていたけど、ミナはハンカチで涙を抑えながら百貨店の中に戻っていった。
……本番はここからだ、と思った。
私は、ミナの言葉ももちろん大事だけれど、雅紀の本音を聞きたかった。
「……A、本当にごめん」
ミナの姿が見えなくなってすぐ、雅紀は私に頭を下げた。
「とんでもないことをしてしまって、本当にごめん」
「……」
「本当に……」
雅紀のこういった顔は見たことがなかった。
何かにずっと耐えてるような、この世の全ての闇を背負っているような。
「……雅紀、痩せたね」
やっと絞り出せた言葉は、今、特別言わなくてもいい言葉だった。
「A……」
「ちゃんと、食べてる？」
「……」
コク、と雅紀が一回頷いた。
「それなら良かった」
「A……元気してた？」
「……うん、元気にしてるよ」
お互い、どこからどう話していいか分からないんだと思う。
ミナの話はちゃんと聞けたのに、どうしても雅紀の顔を見ると、これまでの事を話されるのが怖い。
雅紀の話こそ、ちゃんと聞かないといけないのに。
さっきまでの決意がグラグラしている。
「相葉さん」
そんな私たちを見兼ねたのか、部長が隣から声をかけた。
「先ほどのミナさんの話は、どこまでが本当でしょうか」
「え……」
部長の方を見ると、やはり部長は私を見ていなくて、雅紀の方をじっと鋭い目で見ている。
「……全て本当です」
「そうですか」
「……」
「相葉さんがそんな方だったとは。残念です」
……部長の言葉は、どこにかかっているのか。
きっと、その、熱い夏の日の、出来事。
「相葉さんは、山風の営業のエースでらしたでしょう」
「……」
「婚約者も居て。人生順風満帆といったところで」
「……」
「そんな方が、たった一夜の過ちで人生を台無しにするとは、到底思えなくてですね」
「……酔っていたんです」
……酔っていた？
「ミナから連絡があって、家まで呼びました。僕の家の方が安全と思ったからです」
「Aに連絡をすると言うのは、考えが及ばなかったんですか」
「それは、もちろん……！でも、ミナがAには彼氏にDVを受けていることを知られたくない、と……」
「え……？ミナが？」
「……うん、Aが紹介した人だったんでしょ？」
そう言われて、あぁそうだ、と思い出す。
高校時代の、同窓会で会った友人。
そうか。
私は、自分で自分の首を絞めたんだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1477人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
cori(プロフ) - 藍さん» はじめまして！コメントありがとうございます。やっと出会えた…？！何て嬉しいお言葉（ ; ; ）ありがとうございます。色々続きも書いてますので、良かったらまた読んでください(^○^) (2019年7月6日 0時) (
レス) id: d86fdce482 (このIDを非表示/違反報告)
藍(プロフ) - 初めまして。ステキな物語をありがとうございました。Sさん側の味方がちゃんといて、安心して読めました。やっと出会えた夢小説でした。ありがとうございました。 (2019年7月5日 16時) (レス) id: c6f01ba164 (このIDを非表示/違反報告)
cori(プロフ) - きみきみさん» 初めましてコメントありがとうございます！櫻井部長にキュンキュンしていただけて嬉しいです〜！ミナちゃんはこのお話の中で唯一の黒い存在なのでその感情は正しいと思います…悪い子ではないんですけど…ね(T . T) (2019年5月22日 17時) (レス) id: d86fdce482 (このIDを非表示/違反報告)
きみきみ(プロフ) - 初めまして！一気に読ませて頂きました。泣いたりキュンキュンしたり感情が忙しかっです(笑)櫻井部長が本当に素敵でした！ただ、ミナは…最後までやっぱり好きにはなれなかった色々と…うん。続きを楽しみに読みます！ (2019年5月21日 15時) (携帯から) (レス) id: 28c39bc336 (このIDを非表示/違反報告)
cori(プロフ) - ともさん» 初めまして！一日で…！嬉しい！二宮くんの掛け合いは、軽くない話の中で一種の清涼剤でした。ミナについては…多少仰るようなこともあるんだろうな、と思います。純粋な雅紀くんだからこそ…でもそこがいいんですよね…続きも書いてますので良かったら(^ ^) (2019年4月26日 0時) (レス) id: d86fdce482 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：cori
| 作成日時：2019年3月10日 13時
