誰かさんの落し物（R.N） (ページ43)

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私が手を下ろすと

机に突っ伏していた永瀬さんは悲しそうな顔で起き上がり私を見た。

「Aちゃんが何の偏見もなく普通に接してくれたのがめっちゃ嬉しかった」

「ありがとう」

まるでもう会うのは終わりかのように

そう言う永瀬さんの顔は儚くて美しくて消えてしまいそうだった。

「なにその終わりみたいな言い方」

強がって言い返しても

目の奥が熱くなるのが分かる。

「俺といたらさ、傷ついちゃうねん。

Aちゃんも、俺も」

その一言が重たくて

なにも言い返せなかった。

「さっきだって無視したかったわけじゃないねんで(笑)

俺だって嫌やったし

Aちゃんも嫌やったやろ？(笑)

でも俺は、そうゆうこと平気でする」

そう言うと、永瀬さんの携帯が鳴った。

電話にでた永瀬さんはいつもの口調で

おん、すぐ行くー

と、伝えていた。

「授業始まるって、ごめんやけど待たせてるし俺行くわ。

ごめんな、Aちゃん時間差で出てきて」

立ち上がる永瀬さんから目を離すことができない。

ここに来なきゃよかった。

告白もしていないのに呆気なく振られて

言葉がなにもでなかった。

「ありがとう、Aちゃん」

視界が少しぼやけている私には

薄暗いこの部屋で永瀬さんがどんな表情をしているかよく分からなくて

ただ呆然と立ち尽くした。

「、、ごめん」

小さく呟いた彼が悲しそうで辛そうな顔をしているのが分かったのは

彼の顔が目の前にきて、私の唇に触れたから。

堪えていた涙が一筋だけ頬を伝った。