誰かさんの落し物（R.N） (ページ30)

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30（廉side）ページ30

Aちゃんと別れ、車を発進させた。

「あかんって、、」

曲がり角で信号に引っかかった俺は

ハンドルにおでこを当て深いため息をついた。

“ 廉 ”

まっすぐな目を俺は逸らすことができなかった。

「俺じゃどうしようもできひんねんから」

Aちゃんは俺が芸能人ということを

恐らくまだ知らないと思う。

本当はあの女はマネージャーで、

あとから来たのは同じグループの平野紫耀だ、と

完全に誤解を解きたかった。

だがそれを言わないのは俺の甘え。

俺のことを芸能人というフィルター越しに見ていないAちゃんとの空間が

とても心地良かった。

それを終わらせることがどうしてもできなかった。

決して好きというわけではない。

今恋愛感情を持ったところでどうしようもないことが分かっているから

ただ、もう少しだけそばにいてほしくて

さっき読み取ったQRコードから

“ 永瀬廉です ”

“ ちゃーんと名前は廉で登録しといてな ”

“ スタンプ ”

と、金髪のキャラクターがかっこよくキメ顔をしている少しふざけたスタンプを送った。

意外と余裕のない自分に気付かないフリをして

少しスピードを上げて家へと帰った。