誰かさんの落し物（R.N） (ページ11)

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「警察呼ばれたいん？」

その人が低い声で言うと五十嵐先輩も怯み

「俺が一人やっただけありがたいと思えや、今度なんかしたら速攻警察呼んだるけどな。それともこの子と今から警察行ってお前の人生終わらしたろか？」

その低い声と冷たい目に怯まない人なんてきっといない。

だけど私は

なぜか、強く惹かれた。

五十嵐先輩は悔しそうな顔で立ち去り

私たち二人だけが残された。

「大丈夫？」

その一言でハッと我に返り

「あ、、」

返事をしたいが上手く声が出ない。

「ん、乗り」

また手を差し伸べる男の人

その手を掴むが完全に腰が抜けており立つことができない。

「腰抜かしちゃったな？はい、なんもせえへんから俺の肩に手回して？はいもっとぎゅーって」

しゃがみながら上半身をこっちに近付けて私の腕を自分の肩に巻きつけた。

近過ぎる顔に余計力が入らなくなるものの

その人は簡単に私を抱き上げた。

「はい、乗り？」

助手席に乗せてもらいシートベルトまでしてくれる。

カチッとシートベルトをはめた音がした瞬間

その人の腕を掴み、顔を埋めて初めて泣いた。