誰かさんの落し物（R.N） (ページ28)

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バイト先と家はすぐ近くだから

永瀬さんとの時間は一瞬だった。

帰りたくない、離れたくない。

そう思いながら

「永瀬さん、はい。落し物。」

私たちを繋ぐたった１つの彼の携帯を

カバンの中から取り出し渡した。

「あー、、また忘れるとこやった(笑)」

ありがとう、と私からそれを受け取り

私が持っていた間にきていたラインにさっと目を通していた。

「てか永瀬さんじゃなくて廉やろ？はい、れーんて言ってみ？」

突然私の方を見てほら！って期待の目を向けてくる永瀬さんに

「廉」

真っ直ぐに彼の目を見つめてそう呼んだ。

私が抵抗なく名前を呼んだことに驚いたのか

永瀬さんは息を詰まらせていた。

「、、そ。下の名前で呼んで」

同時にマンションの前に着いてシートベルトを外す

「ありがとうございます」

彼の方を向いてドアを開けようとした瞬間に

勢いよく右腕を掴まれる。

「え？」

思わず振り向くと

苦しいほど切ない顔をした永瀬さんが

「なんでそんな悲しそうな顔するん？」

そうポツリと呟いた。