▽39. ページ39
*
階段のほうから、楽しそうで騒がしい声が聞こえた。
私たち以外に誰の気配もない廊下なので、その声はとても響いた。
騒がしい声が、だんだんと近づいてくる。
…そんなこと、私には関係ない。
また、ポケットの中の携帯が鳴った。
今度は、電話らしい。
「…電話、出ないの?」
私たちの沈黙を破ったのは、先輩だった。
鳴りやみそうにもない電話の音。
「あ、ハイ…。」
私は慌てて、携帯を探そうとしゃがんだ。
先輩の気配が、遠のいた気がした。
振り向いてみたら、案の定…。
先輩は私に背を向けて、階段のほうへ向かっている。
…行ってしまう。
まだ、何も話してないのに。
まだ、何も、何にも…してないのに。
「…あ…っと、…先輩!」
携帯なんか、どうでもいい。
電話なんか、どうでもいい。
そんなの、履歴見てかけ直せばいい。
また、後悔する。
後悔して、後悔して。また、あの日々に戻る。
夢なんか見たって、明日会えたらなんて考えたって。
何にも変わるわけないのに。
気付いたら、私の手は、先輩の腕をつかんでいた。
見上げたら、顔が真っ赤で。私を見下ろす先輩の顔。
…振り払われない?
「…私も、いやじゃないです。
逆です。距離近いの…、う、うれしい…です。」
あー、もう。
何言ってんだろ。何やってんだろ。
言葉が、行動が私の気持ちとは裏腹に暴走する。
あの時みたいに。気持ちが、膨れる。
ギューって握ってた先輩の腕。
その自分の力に気付いて、慌てて離す。
「…一緒に、洗いませんか…?」
自分の精いっぱいが、いやんなる。
*
196人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
瑠璃(プロフ) - ハムさん» ありがとうございます!これからもぜひお付き合いください! (2017年3月21日 15時) (レス) id: 578acd86f7 (このIDを非表示/違反報告)
ハム - めっちゃキュンキュンします…/////// (2017年3月12日 16時) (レス) id: 5b86c41bd0 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃(プロフ) - あいさん» コメントありがとうございます!!更新がんばるので、これからもおつきあいお願いします!! (2017年3月11日 14時) (レス) id: 578acd86f7 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃(プロフ) - らんさん» コメントありがとうございます!!…結末はハッキリ言うともう決まってるんですけど…楽しみに待っていてください!!更新がんばります!! (2017年3月11日 14時) (レス) id: 578acd86f7 (このIDを非表示/違反報告)
あい - すごい面白いです!選手が先生なんて良いですね〜。これからも頑張ってください! (2017年3月11日 10時) (レス) id: 11e0fd23e2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:瑠璃 | 作成日時:2017年1月11日 16時