37 TH ページ7
これで良かったんだ。
もう、おしまい。
俺たちは、俺たちが、
出会う前の、
何も知らなかった頃に戻るだけ。
全てのことに、終止符を打つ。
．
．
．
引っ越しが、年内に早まることになった。
両親の行動があまりに身勝手で
吐き気がするけれど、
逆に今でもありがたく思う。
彼女の、Aとの思い出が、
色濃く残るこの場所から
一日でも早く立ち去ることができるなら。
あの日以来、Aからの返事はない。
ないどころか、
読んでもくれてない。
ずっと未読のままだった。
そりゃあ、そうか。
突き放してほしいって
言ったのは俺なのに、
まだ未練があるなんて言ったら
女々しいって思われるし。
でも、これで良かったんだ。
Aの記憶の中で
俺を憎い奴だと、思ってくれればいい。
そのまま、忘れてくれれば、
なかったことにしてくれたらいい。
って、最初は思ったけど
心のどこかでは、
ハッピーエンドを望む自分がいる。
もし、ソウルに行くことを伝えたら
Aはどう思うんだろう。
何で言ってくれなかったんだ
って、怒られそうだな。
面と向かって言えなかったから、
最後にほんの少し希望も込めたのに、
未読のままなのが答えなんだろう。
やっぱり、言わなきゃよかったかな。
「………荷物、これが最後ね？」
腕を組みながら、
壁にもたれながら母が俺に聞く。
粗方送れるものは先にソウルへ送り、
ここを発つときにはこの身だけ。
良い機会だから、いろいろ捨てた。
結局残ったのは段ボール三つ分。
俺が一番少なかった。
「お父さんのと一緒に送るから、まとめたら玄関に置いておいて」
TH「…………なぁ」
「…なに、お母さん忙しいの」
TH「出発の日ずらせな、」
「馬鹿なこと言わないで。さっさと片付けなさい」
やめよう。
もう、望みは捨てよう。
今は、向こうに行ってから
なにをするか考えないと。
とにかく働いて、
一人暮らしをする資金を稼いで、
早くこの呪縛から解放されたい。
また新しいキムテヒョンとして
ソウルで生きていくために
携帯も解約して、
カトクのIDも消した。
だからA、
俺のことは忘れて、
どうか、元気でいて。
．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 339人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「BTS」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：波奈(はな) | 作成日時：2021年7月17日 22時
