55 TH ページ25
『…、デザインが気に入ってるだけ』
TH「…」
『テヒョンに貰ったから、とか、そんな理由で残してるんじゃない…』
TH「……ふぅん」
『これでいい？気が済んだ？…もう帰るね』
せっかく蓋をしたのに
時間はかかったけど
やっと忘れられそうだったのに…
TH「待って」
『…もう、なんなの、！』
TH「…ごめん」
『………は、？』
なにに対してか、とかはない。
俺は、ずっとAに
謝らなきゃいけないと思っていた。
絶対よりも必ずよりも、義務近いくらい。
だけどそのAは、かなり困惑している。
…そりゃそうだ。
謝られる理由なんてないんだから。
君を好きになってしまったこと
それは一方的な気持ちだったこと
その気持ちにきちんと向き合わなかったこと
俺は全てが、中途半端だったんだ。
『…謝る理由は？』
TH「……、」
『テヒョンはなにを考えてるの？』
TH「……そ、の」
はぁ、とため息をついて
Aはベンチに再び座った。
呆れたような顔でこちらを体を向けて、
俺が言葉を待っているようだった。
TH「…ネックレスを持っててくれて、ありがとう…」
『だから勘違いし、』
TH「…勘違いするだろ、ふつう。
俺が、どういう意味があげたか分かってんのか？」
『…え、』
TH「Aと、ずっと一緒にいられたらって思ったから…、」
今さらそれを伝えたところで
これからの人生は変わらないし、
変えることはできない。
どうして伝えたかったのかも、分からない。
たった0.1%でも、
宝くじの当選くらいの確率でも、
ほんの僅かでも望みがあるんじゃないかと
そんな気持ちがどこかにあって。
数年ぶりに会ってさ、
好きだった奴が俺のあげたネックレスを
今でもつけてるなんてありえる？
…結婚してるくせに、馬鹿だろ。
俺も、Aも。
先程までの勢いを失ったAは、
俯いて、口を開こうとしない。
否定をしない、ということは
それを認めるということでいいのか？
Aにも、なにか言いたいことがあるんじゃないのか。
TH「…なんか言えよ、」
『……』
…本当は、何か言われるの方が怖い。
俺の気持ちを否定されるのが、怖いんだ。
．
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作者名：波奈(はな) | 作成日時：2021年7月17日 22時
