一番近くて遠い君 2 【TH】【完】 (ページ13)

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「こちらのロッカーは、
ここを真っ直ぐ進んで右手の奥にございます」

　

それでは、と軽く会釈をして
職員さんは立ち去ろうとしていた。

いきなりのことでしばらく
立ち尽くしてしまって、
でも大事なことだから聞いておきたくて。

　

『……あ、あの！』

「はい、なんでしょう」

『あ、…どうして、私だと、分かったんですか』

「キム様が、ご丁寧に教えてくださいましたので」

『教えた…？』

「来たらすぐにわかる、とても素敵な方だ、と」

　

かなり抽象的だったので
自信は全くなかったんですけど、
と困ったように笑ったが
フッとすぐ真剣な顔して。

私をまっすぐみて、
また口を開いた。

　

「きっと、すごく想われているんでしょうね」

『…』

「…どうか、お幸せに」

　

深いお辞儀をして、
その人はまた仕事に戻っていった。

　

鍵を受け取ってから、
私はしばらくその場を動けずにいた

テヒョンが私に
渡したかったものってなんだろう？

ここには、なにが入ってるの？

見たいような、見たくないような

複雑な気持ちが交差する。

　

『………あ。ひこうき』

　

青空へ飛んでいく鉄の塊を見て、
私の本来の目的を思い出した

こんなところで
立ち尽くしている場合じゃなかったんだ

何時、って言っていたっけ

　
　

『………もうだめじゃん、』

テヒョンが発ってから、

すで二十分が経過していた

　

悔しさと、

悲しさと、

自分の愚かさと、

いろんな感情の涙があふれた

　

．

　

．

　

．

　

『……このあたりかな』

　

空港のお姉さんから預かった
ロッカーの鍵。

最近はコインロッカーが多いけど、
この空港は年季が入っている

少し錆びついた鍵に書かれた
番号を探した。

　

この番号にどこか
見覚えがあると思ったら、

え、私の誕生日じゃん。

テヒョンに教えたことあったっけ？

私は聞いたことはあるけど、
言った覚えがないな

なんで、わざわざ
この番号を選んだんだろう

ずるいなぁ、、、

　

ただロッカーを開けるだけなのに
いざ目の前に直面すると、
全身に緊張感が走る

今にも、
心臓が口からこぼれてしまいそう

　

私は、ゆっくりと、鍵を回した

．