"カイト" (ページ1)

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はじまりページ1

憧れの楽器屋さんで働くことになった。

店内には見たことないくらいの

楽器が並んでいて、

ピアノ、ギター、フルートにクラリネット。

オシャレな照明で照らされる楽器は

キラキラと輝く。

ここが、私が今日から働く場所。

思わず持ってきたバックを抱きしめ、

自然と笑みがこぼれていた。

「あのー、」

突然声をかけられ振り返ると、

男の人が一人。

「Aさん、ですかね？」

『はい、そうですが...』

いきなり私の名前を呼ばれ

困惑してしまう。

会ったことのないスラッとした人。

こんなまじまじと見つめるのも

不審者のようなものだけど、

小顔でいい匂いがするイケメンだ。

こんな人が私に何か話でもあるのか？

と思って見つめると

その人は急いで名刺を渡す。

中村「えっと、中村海人って言います」

『中村、海人さん』

その名前の響きは、

どこかで聞いたような、

聞かなかったような。

中村「はい！もう、その通りです笑」

くしゃっと笑顔を作る中村さん。

その目はどこかキョロキョロしている。

中村さんは、私より歳下だろうか？

そんなことを考えるうちに、

何を言えばいいか

分からなくて焦っていると

中村さんは笑顔で言い出す。

中村「あっ、お前誰だあ！」

「...って思いますよね笑」

「ここの社長の一応息子です」

『...一応？』

中村「あ、はい、まぁ一応」

中村さんは少し俯く。

これ以上聞かない方がいいかと思い

『私今日からここで働く予定で、』

とりあえず伝えた言葉は

口が何故か回らない。

中村さんが小顔で

イケメンすぎるからか？

何を、

動揺しているんだろう...

中村「はい、お待ちしておりました」

俯いた顔をあげる中村さんは、

私を楽器屋の奥へと連れていった。