アイクレ (ページ30)

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私は深田くんに近づき彼の右目をそっと手で覆った

「見える……？」

深「ううん…なんにも見えない」

「嘘でもいから見えるって言ってよ」

こんなに優しい深田くんがアイクレ…

私には信じられずショックで涙が溢れてしまった

「 …… 」

深「離してよ……手」

深「見えないから」

彼の右目に添えていた手を離すのが怖くてずっと覆っている

そうして何も言わず固まってる私に、

深田くんの顔がだんだん近づいてくる

深「どこ顔」

彼の顔を見つめていれば、

私の頬あたりに深田くんの唇が触れた

「ちょっと……、」

深「唇狙ったのに～笑」

そう言って笑う深田くん

「…本当なの？」

深「本当だって」

深「だから黒田のとこ戻りな」

「……やだよ、」

「深田くんがいい」

深「俺のこと怖くないの？」

「こわくないよ…… 」

”恐怖”より”好き”が強かった

深「もう帰ろ」

深田くんは立ち上がりやきそばのゴミを片付ける

それをただただ座って見ているわたし

深「…俺、正直、Aのこと好きだよ」

「えっ…？」

深「だから、これ以上近づかない」

意味が分からなかった

深「…傷つけちゃうから」

「どうしてよ、私深田くんのこと好きだよ？」

深「アイクレってどういう意味か知ってるの……」

深「好意を寄せられた女の左目えぐるんだよ…」

深「サイコパスなんだよ」

深「だから制御してんの、Aへの気持ち」

「しなくていいよ」

「深田くんがアイクレでもいい」

無責任に彼にそう言葉を投げつける

「わたし信じてないから」

「優しいもん深田くん。そんなことするはずない」

深「どうなっても知らないからね、」

「いいよ！」

深「…さっさと佐藤から黒田奪ったほうがいいよ」

「光輝はもういいの。忘れたいから」

そういって深田くんに抱きついた

少し怖かったけど寂しさを埋めてくれるのは彼しかいなかった

深「ごめんね、」

そういって私より何倍もの力で強く抱きしめる深田くん

「好きでいてもいい……？」

深「だめ、」

「やだ」

深「Aのことだけは悲しませたくないから」

「離れる方が悲しいよ…」

深「今だけだよ、すぐ良い人見つかるって」

深「平塚とかさ。」

「 …… 」

彼の言っていることが本当だとしたら、

現実を見ることは不可能だった

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