〝異常〟だなんて言わせない。【絶対零度】 (ページ13)

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12＿真っ赤な血と白雪姫ページ13

直樹「先生ぇ～、何でこんな所に」

転んだ女性を庇う山内の背後から、直樹が銃を向ける。
その引き金を引こうとしたその時、

「直樹！」

直樹の父親だ。
直樹がそちらに目を向けた隙に、女性を逃がす。ゆっくりと歩いてくる父親に、危ないから来るなと叫んでも、自分の息子だと言ってその足を止めない。

「直樹、何してるんだ」

刹那、銃声が響いて、父親が床に崩れ落ちた。
撃ったのだ。何の躊躇いもなく。
直樹とAを隔てるのはこの父親だけ。こいつさえ認めてくれればずっと一緒にいられるのに。こんな奴は要らなかった。

直樹「あぁ、やっと殺せた」

山内「岡崎ィ!!!!!!」

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿

A「お願い、間に合って！」

息が切れて上手く呼吸できない。
建物は目の前。飛び込むと、そこは地獄絵図のような、恐ろしい光景が広がっていた。
恐怖に染まった人々の顔、所々に血を流して倒れている人もいる。

A「え…………」

こんなにしたのは直樹？そんなのあり得ない。
嗚呼、直樹は被害者なのかと思えば些か安心できた。
けど、

「そこの女の子！今すぐここから出なさい！」

足取りも覚束ない、フラフラになりながらひとりの女性が駆け寄ってきた。

A「あの、一体何が…………」

「男の子が鉄砲振り回して、ここの人たちを撃ち殺して回ってるんだよ！」

制止の声を振り払って、走り出していた。
直樹はこんなことしない。優しい子だ。いつもAを守ってくれる。
誰にも捕まっちゃダメ。必ず助けてあげる。

￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣

一方、
もう諦めろ。と声が響く。
銃を奪われ、ナイフを振り回していた直樹は自身の敗北を思い知ったらしい。

直樹「Aが来たら、殺してあげて」

井沢「お前、何を、……っ！」

持っていたナイフで、自ら首を切った。
周りに鮮血が飛び散る。

A「直樹！」

飛び込んできたAが、目を見開いた。

小田切「Aちゃん！」

A「直樹…………直樹、」

フラフラと彼に近寄り、力なく座り込んだ。
辛うじて目は開けているが、事切れるのはすぐだろう。
血にまみれた手でAの手を握り、掠れた声で『愛してる』と呟いて、そのまま目を閉じた。

A「嫌！嫌だ！死なないで！」

涙でぼやけた視界を、真っ赤な血の色が覆い尽くす。
ミハンのメンバー達は、泣きじゃくる少女を、ただただ見つめることしかできなかった。

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