君と、未来の話をしてみたい。２【兵頭十座】 (ページ7)

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「やっと会えた。今出れる？」

「え、あ、出れる、けど‥」

出れる、と俺が答えると、先生は俺の手を掴んで引っ張った。

寮の中が少し寒いからと厚着をしていてよかった。

繋がれた手がなんだか懐かしくて、緊張から寒いはずなのにじんわりと汗が出て来る。

少量の汗で繋がった手が少し滑る。

「あ、あの、せんせ‥」

「僕、もう先生じゃないよ」

先生と言おうとしたその時、先生は繋いだ手をぎゅっと強く握り直して、前を向いたままそう言った。

気が付くと、人気のない道。

イルミネーションもないし、大きなクリスマスツリーもないし、雰囲気なんて言葉は似合わない。そんな場所。

「１日だけこっち戻って来たんだ、会いたくて」

その場所で、手を繋いだまま振り向いた。

１日で帰ると言っていたから、急いで来てくれたのか、冬だというのに額には汗が滲んでいる。

疲労と寒さで染まる頬を緩ませて、俺の好きな笑顔を見せてくれる。

「‥俺も、俺も会いたかった。せん‥」

「A」

「‥え」

「Aって呼んで。僕はもう先生でもない」

俺より10以上上のはずの先生は、そうやって無邪気に笑う。

ちらちらと雪が降り始める中、イルミネーション１つない、星の輝きが一層増すこの場所で、俺は初めて名前を呼んだ。

「‥A、さん」

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