君と、未来の話をしてみたい。２【兵頭十座】 (ページ1)

今日:5 hit、昨日:0 hit、合計:9,619 hit

４９ページ1

-

ピロン、と音がして、俺の携帯が震えた。

卒業式から一週間後、俺たちの生活は何も変わらなかった。

学生組は春休み、会社員組はいつも通り仕事。

普段通り稽古もして、学校に行かなくなった以外いつもと変わらない日常。

俺はというと、講義が休みの臣さん特製のお菓子をもくもくと食べている。

「美味いか？十座」

「っす、美味いっす」

「‥十座、なんか、明るくなったな」

「え？」

「卒業式ちょっと前から、元気なかったろ？心配してたんだ」

「‥そう、ですか」

臣さんにそう言われて、忘れようと努力していた記憶が蘇ってきた。

‥先生と過ごした半年と少し。残ったものは、連絡した履歴や２人で撮った少しばかりの写真。

お揃いのものなんて買わなかったから、物なんてないけれど。

先生はいつ向こうに行くんだろうか。何も聞いていないから知らない。

「‥臣さん」

「ん？」

「俺は‥俺は、いけないことをしたんでしょうか」

「‥教師と、付き合ったことか？」

俺が小さく頷くと、臣さんは空になった皿を持ってキッチンへと向かった。

「別に、悪いことじゃないと思うぞ。人を好きになってしまうのは仕方ない事だと思うし」

「‥そうですか」

-