あなたのことは苦手です。〈佐野玲於〉

▽　you ページ17

今日は、奏太と会う約束をしている。




まぁ、新居探しとでも言うのかな。




実感がわかない。




でも不安はない。




上手くやっていける。きっと。




奏太「どんなところが良いかな〜」




『まず、マンションは無理でしょ。奏太の楽器だけでいっぱいになっちゃう』




奏太「あー、だね」




オシャレなとこが良いなー




あ、庭も広い方が良い




天井高くて…




ん？佐野さん！？




仕事、今日は午後からだよね…




どこ行くんだろ




奏太「A？」




『ん？あぁ、ごめん』




私が気にすることないよね。








『ここ良いじゃん』




奏太「でも広すぎない？笑」




『楽器きたらちょうど良いって』




奏太「そっか、じゃあ平気だな」




『ここ、最高だよ。オシャレだし、天井高いし、お庭広いし。おまけに景色も良い』




奏太「そんなキラキラした目で言うなよ笑」




『楽しみすぎて、つい』




顔にはきっと出てないけど、すごく興奮してます。




理想以上のお家が見つかって…あー、楽しいよ絶対。




奏太「A、最近よく笑うようになった」




『え？』




奏太「分かりづらいけど」




『変わったのかな…』




佐野さんと会って、あんなこと言われて、でもなんだかんだ優しくて。




本当のことをズバッと言ってくれたからな。




佐野さんのおかげだな。




まだ苦手意識は拭いきれてないかもだけど。




だって、嫌われてるもん。




少しくらい笑ってくれてもいいのに。




奏太「A、顔キモい」




『え』




奏太「だって、ニコニコしてるんだもん。そんなに楽しみ？ここでの生活。笑」




笑ってた？




私が？




しかも佐野さんのことで？




嘘でしょ…




『う、うん。楽しみでしょうがない』




楽しみだよ。ホントに。




こんな嬉しいことはない…と思う。

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