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A)…長谷川くん、っ
電車乗り遅れちゃう…
慎)っあ、ごめん…
咄嗟に掴んでしまっていたAの手首を離す。
…離したくなかった。
なんだか遠くへ行ってしまいそうな気がして。
A)長谷川くんも時間外だよ笑
慎)…そ、だね…
A)………
それでも教えて、って言えない俺は本当に意気地がない。
そっと力を緩めた。
A)……いるよ、
慎)…ぇ、？
A)いる。
鈍感で、近くに居てくれてるのに気付いてくれなくて、好きなことには真っ直ぐで、ちょっと何考えてるか分からない時があって。
…私が好きなのはそういう子。
振り向いてくれる気はしてない。でも好きなの。
慎)…、
いるん、だ……
そりゃそーだよな、普通に人間だし好きな人の1人くらい居たって…
A)……長谷川くん、？
慎)…あっ、ごめん、じゃあまた……
A)…うん、またね
微笑む彼女はいつもと変わらなかった。
電車に乗って、俺の方へは見向きもせず座席に腰を下ろすのが見える。
……好きな人。
恋してるんだな、Aも。
慎)…っ、
……胃の辺りがきりきり痛む。
目の前を通り過ぎてく電車。
俺に勇気があれば引き留めて今伝えることが出来ただろうか。
慎)…は、
…初めての感覚だ。
知りたかったことがはっきりして、スカッとした筈なのに。
胸が苦しい。
複雑な、訳の分からない気持ちになってる。
彼女に好きな人が居るって聞いたから？
なんで俺が心痛くなんないといけないわけ、
分かんない分かんない分かんない。
……気付きたくない。
知りたくないこんな自分。
こんな思い。
気付けば君と築いた何もかもが崩れそう。
いつもみたいに接することが出来なくなりそう。
慎)…………す、き……？
答えが出るのは本当にあっという間で。
…ずっと気になってたんだ。
俺なんかについて回る変な奴じゃなくて。
Aを、1人の女の子として。
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作者名：れい | 作成日時：2020年5月20日 21時
