SnowScape (ページ9)

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翔太side

面会時間終了まであと数分。

マットの上にあぐらをかいた俺の上で

丸くなったまま動かない亮平。

寝ているわけでも、ぐったりしているわけでもなく

ただただ俺の手や腕を触ったりして戯れてる感じ。

くっついてると安心すんのかな。

俺も涼太に対してそう思うことがよくあるから

わからないでもない。

『りょう、俺もうおうち帰る時間だから、ベッド行こ？』

料理は最近は涼太がやってくれているけれど

買い物くらいは俺がしないとと思ってて、

帰りに買うものを思い出しながらそう声をかけると。

むくっと起き上がった亮平が俺の首に腕をまわして締め付ける。

亮「や、なの。」

『んーでも帰らなきゃ。』

亮「やだの！りょーもおうち帰る！」

ヒートアップしてぎゃんぎゃん泣き喚き始め、

それに伴って力が込められていく首がちょっと痛い。

泣きもせず、わがままは疎か一言も発することがなかった

ここ数日を考えると嬉しすぎる進歩で

なだめながらも顔がニヤけるのはしょうがない。

そうだよ、亮平もちゃんとご飯食べれるようになったら

俺と涼太のいる家に帰るんだ。

俺たちは家族だから、俺らの家に一緒に帰る。

亮平の発するひとつひとつの言葉に喜びを感じて

心の中で返事をした。

あ、そうだ。

泣いてまで留めようとしてくれる亮平には申し訳ないけど

本当に特別な事情がない限り、ここで働いている俺でさえ

患者さんの病室に泊まることはできないから。

今は勤務中だからプライベートの電話に出てくれるかはわからない。

出なかったらナースコールで呼ぶか？

患者でもない俺が呼び鈴として使うのは気が引けるから最終手段だけど。

________

寝ている時間にこっそりされた点滴からしか

栄養を摂っていない亮平は体力が更に落ちていて、

ぎゃんぎゃん大泣きした今は

俺の胸に凭れてうとうとぽやぽや。

小さい子って大泣きするとき体中使って真っ赤になるから

季節関係なくもう汗びっしょり。

前髪は張り付いているし、顔は鼻水と涙でべしょべしょだしで

早く拭いてやりたいけど、生憎タオルが仕舞ってある場所は

立ち上がってからじゃないと届かないから断念。

ｺﾝｺﾝ

不安そうな顔で部屋に入ってきた涼太が

ある程度近くまで来たところでしゃがむ。

ヒクヒクとしゃくりあげる亮平もしっかり涼太を見ていた。