SnowScape (ページ41)

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『病院シリーズ』＊ほのぼの編....あったかい朝の日常にページ41

翔太side

涼「ちょっと、しょうた、翔太！」

名前を呼ばれながらゆさゆさ揺すられて薄っすら目を開けると、

朝の光を浴びてすやすや眠る亮平。

『へあ？』

涼太の声で起こされていつも通り腕を引っ張ってもらって

というはずだったのだけれど予想外。

涼「まだ寝ぼけてるの？時間になるまで起こさないから寝顔見るーって言ってたのに、時間過ぎても戻ってこないわ、自分も寝てるわ、まったく。」

枕元に胡坐をかいた涼太が呆れた顔で腕を組む。

そうだった。

だんだん覚醒してきて起床時間を

30分ほどオーバーしているのを腕時計で確認すると、

タオルケットに頭までくるまっている塊に手を伸ばす。

『りょーう。朝だよー。おっきおっき。』

少しめくれた隙間から顔が見えて、瞼が震え、唇がむにゅむにゅ動いた。

俺とは違って本当に寝起きがいいな。

体をぽんぽんしながら声を一回かけただけで目を開いた。

機嫌を悪くして泣きわめく、なんてことはないけど

寝起き特有のぽやっとした感じとか、ちょっと顔がむくんでるのとか

毎日見てる親としてもめちゃめちゃかわいくて。

『おはよー。よく寝たね。んー？』

寝ころんだまま万歳して伸びをひとつ。

寝起きで呂律の回らない口がほにゃほにゃと子猫の鳴き声みたいな音を発した。

『えーなんてぇ？笑』

涼「ごはん、だってよ。お腹空いたね。今日の果物は亮平の好きなりんごだよ。」

よし、じゃあ早いところ顔洗いに行きますか。

脇に手を入れて抱き上げると細い髪の毛が絡まり合って

ふわふわすごい寝癖。

涼「りょう、おはよう。ほっぺが赤くてかわいいね。」

人差し指と親指でぷくぷくの頬を挟み、無邪気に笑う涼太。

亮平はいつだってかわいいけども、でも。

『俺には？』

涼「えー、翔太は二度寝じゃん。」

なんて眉を下げながらも前髪を撫でつけるように優しく触れてくれる。

何て言ってくれるんだろうと待つこと数秒。

亮「とまと、食べたいねー。」

え、トマト？

突然の呟きに二人して亮平を見つめるが。

涼「じゃあ準備してくるね。」

ちょっとした慰めかポンポンと背中を叩いて、寝室を出て行った。

誰も悪くない。とはいえ行き場のないこの気持ち。

『俺はいらねぇからっ』

涼太にとっては既に把握した俺の好き嫌い。

だけど無抵抗は解せないから。

そんな悪あがきに、とっくに覚醒した亮平が不思議そうに見つめていた。

fin.