SnowScape (ページ32)

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佐久間side

冠番組の収録が終わり、

荷物をまとめるメンバーでにぎわう楽屋。

主演映画の宣伝の番組収録のために先に出る照とめめ。

先輩の舞台を見に行く涼太。雑誌の撮影に行くラウ。

買い物に出かける翔太、ふっか、康二。

次々と楽屋から出て行って残ったのは俺。

それと隅にある椅子で

体を小さく折りたたんだまま動かないあべちゃん。

収録中に普通を装うのに精一杯で

もう周りを見るような余裕がないのか

皆がすっかり帰り支度を終えていなくなったのにも気づいていない。

(皆は体調不良に気づいた上で頑固なあべちゃんに配慮して俺に任せてくれたんだけど。)

『あべちゃん。』

近寄って声をかけても反応はなく、

うんうんと小さく唸っている。

背中に手をまわして肩を抱くようにさすると

頭を抱えていた腕が離れて涙が一筋流れた顔が露わになった。

小さく開いた口からはふはふと浅い呼吸を繰り返し、

目は合っているようで虚ろだった。

「い、たいの、」

『どこが痛い？頭かな？』

「ぜんぶ、全部いたいぃ。」

呼吸の間でヒックと苦しそうにしゃくり上げる。

全身が痛いと訴えながら手が伸びた先は足。

関節が痛むのかと膝をさすってやれば、

その下のふくらはぎのパンパン具合に気づいた。

ちょっとごめんねと声をかけ、

私服のゆるダボズボンをずり上げるとむくんで血色の悪い足。

私服では黒いスキニーを好んで履くことが多いあべちゃんが

最近はゆるいものばかり履いていたのはこれが原因だったのだ。

応急処置にしかならないかもしれないけれど、

ソファに横たわらせ、足を上げる。

優しく触れて片足ずつマッサージを進めて、

ふと頭の方に目をやると顔を背けて

首の後ろを親指でぎゅうと押し込んでいた。

『指痛くなっちゃうよ。頭じゃなくて首痛いの？』

頭が痛ければこめかみを押すだろうと尋ね、

あべちゃんの指をのけて手で押すと随分とガチガチだった。

首から肩にかけてすごく凝っている。

こんだけ固くなっていればそりゃ頭も痛くなるでしょうよ。

『なんかホットタオルでももらってこようか。』

独り言のつもりで小さく呟いたが、

あべちゃんは俺の手首を掴んで首を振った。

「いらない。佐久間もう帰って。」

そんな泣きそうな顔の人の言うことなんて信じられませんな。