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翔太side
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『落ち着いた?』
しゃくり上げていた背中が穏やかに呼吸をして数分、
もうそろそろ首とか疲れたし、と思って声をかけるも
抱きついたまま。
いや寧ろ肩にぐりぐりとおでこを擦り付けられてさっきより重い。
『おーい?』
「うらやましい、って思ってた。」
『え?』
「亮平くんが病院から帰る時、涼太くんと翔太くん、どっちのときも抱っこしてもらって、その腕に安心した顔してて。俺には頑張っても届かない幸福の雲の上にいるみたいに。」
人はそれを無い物ねだりと言うのかもしれない。
でも彼の願いを叶えられた俺は、できることがまたひとつ増えた喜びを感じていた。
人を不幸にする人間。
20年以上前の事件と今回の事件。
悪かったのは誰なのか。
社会から捨てられた父も姉を亡くしたおじも
加害者であり被害者である。
誰かを恨めば楽になる気がするけれど、
その闇は何をしてもがこうとも決して俺たちを逃してはくれない。
光はどこか、希望は何か。
手を伸ばした方向が合っているのか、今の俺にもわからなかった。
fin.
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作者名:はちみつかぼす | 作成日時:2022年3月3日 17時