夏の暑さのようなもの ページ29
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勝利 「本当に大丈夫ですか？」
「うん」
入り口まで来てもう一度Aさんに確認する。
その返事を聞いて、俺たちは建物の中に足を踏み入れた。
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「なにも見えない…」
勝利 「ですね」
「やっぱ怖いな…」
勝利 「だから俺もう一回聞いたじゃないですか」
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やっぱり怖いみたいでAさんはそんな声を漏らす。
大丈夫ですよ、と安心させる言葉をかけようとした時、右側からバン！と複数の手が伸びてきた。
きゃあ！とオーバーすぎるリアクションが左側にいる彼女から聞こえた。
正直、そっちの方がびっくりした。
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勝利 「苦手度ちょっとどころじゃないじゃないですか」
「ごめん…」
勝利 「もう…Aさん右手、出してください」
「右手？」
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不思議そうに出された右手をぎゅっ、と握った。
暗くてもAさんが驚いているのが伝わってきたけど、俺は気にせず早く進みましょう、と声をかけた。
その後もAさんは驚きっぱなし。
俺ももちろん怖かったけれど、Aさんの方が圧倒的にビビっていたのでそこまで怖さは感じなかった。
入る前に所要時間10分程度と書いてあったお化け屋敷を何とか抜け出して外に出た。
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「死ぬかと思った…」
勝利 「途中ビニールにもびっくりしてましたよね(笑)」
「あの緊張状態にいたら人に触られたと思うじゃん！」
勝利 「もう、Aさんも今度から強がんないでくださいよ？」
「すいません…」
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お化け屋敷から出てきた興奮状態のままお互い話していたので、手を繋いでいるということを完全に忘れていた。
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勝利 「あっ…すいません、手…」
「あぁ…こっちこそごめんね、ありがとう」
勝利 「いえ…」
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もう夏なんてとっくに過ぎているのに、夏の暑さのようなものを全身で感じた。
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作者名：桜彩 | 作成日時：2022年11月1日 23時
